. ページ3
*
「どこで食べる？」
『うーん、学食行ってみたいなあ！』
「…いいよ、」
彼女の言うまま学食の方へ向かって2人で歩く。
いつものペースで歩いていると、彼女が少しだけ後ろを歩いているのに気がついて。
女の子と一緒に歩くなんて初めてだから分からなかった。
彼女の歩幅をよく見て、合わせるように少しだけゆっくり歩くとちゃんと肩を並べて歩けたんだ。
『ひらつか、しょうまくん？だよね？』
「…え？ああそうそう」
いきなり名前を呼ばれるから思わず声が裏返った。
ええと、彼女の名前は、と記憶をたどってもスマホを見ていたから教室にいた誰の名前も覚えていないことに気がついてギョッとする。
俺が難しい顔をしていたのか、彼女は少し笑って、
『私の名前、分からないんでしょ？』
そう言った。
「ごめん、」
『んーん、全然大丈夫！いつもそうなの、影薄いのかなあ私って。』
悲しそうに呟く彼女になぜか否定しなければならない、と脳がすぐに判断して。
「違う！」
『…え？』
「あの、その、影が薄いとかじゃなくて、俺誰の名前も覚えてない、」
『え、そうなの！？ちゃんと人の話は聞かなきゃダメだよ、しょうまくん。』
そう言って彼女は今日1番の笑顔を見せながらくすくすと笑った。
彼女に呼ばれた名前が自分の名前ではないように、頭の中を駆け巡った。
『…A、Aです。よろしくね？しょうまくん。』
「あ、うん。よろしく？」
こんなよく分からないやりとりが俺と彼女の全ての始まりだった。
.
俺はいつしか彼女のことをAと呼ぶようになり、彼女も俺のことを翔馬と呼ぶようになった。
偶然にも取っている授業が全て同じだった俺たちは、大学内で2人で行動するようになり、毎日一緒に昼ごはんを食べて、頻繁に連絡も取るようになった。
まあほとんどが俺の「席取っといて」なんだけど。
お互い1人だったから仕方なくくっついた、周りにはそう見られているかもしれない。
だけど、俺はたぶん彼女じゃなかったらあの時声をかけていなかったと思う。
.
この感情が恋だというのに気づくまで、そう時間はかからなかった。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 140人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほの(プロフ) - なぁちさん» コメントありがとうございます😭💓本当に湧くんに申し訳ない気持ちでいっぱいなので笑、必ず湧くん幸せエンド書きますね( ߹꒳߹ ) (2021年10月18日 23時) (
レス) id: 81704fe7b7 (このIDを非表示/違反報告)
なぁち(プロフ) - 面白かったです ; ; 元木担として心が苦しくなってしまったので次のお話は湧くんハッピーエンドください〜！（笑） (2021年10月18日 2時) (レス) @page19 id: ee9901d79b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほの | 作成日時：2021年1月13日 9時
