ナイモノネダリ (ページ23)

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『私がそんなに薄情な人間に見える？確かにすぐ泣いちゃうくらい弱い人間だけど、光成はもう私にとって特別な人だから…。それはたとえあなたが私が恨んでいる人の子どもでも変わらないよ？』

「…Aさんは優しいよね、」

『…そうかな？』

「ん、優しすぎるくらい。その優しさのせいで辛い思いをしたこともあると思うけど、いま俺はAさんの優しさに救われてるわ。」

『それなら、よかった。』

悲しそうな顔だった彼が、優しい顔で笑うから、思わず頭で考えるよりも先に言葉が先に出た。

『…光成のその顔すき、』

「え？」

『え？私今なんて言った？』

自分で言ったくせに、頭で理解した瞬間、一気に頬が熱くなるのがわかる。

確かにもうただの同居人の域を越えているけれど、相手は高校生で、こんな感情、抱いていたとしても伝えてはいけないはずなのに。

「自分がいちばん分かってるくせに、」

逃げようとしても遅くて。

彼の手が私の頬を捕まえる。

「Aさん、顔真っ赤だよ？」

『…言わないで、』

「かわい、」

『大人をからかわないの、』

頬を掴んでいる彼の手を剥がすように捕まえると、

「最初に言ったのはAさんじゃん、」

ってなんとも彼らしいマジレス。

いやそう、そうなんだけどさ。

これ以上いくと、本当にいろいろと良くない気がする。

「はあ、俺が我慢してあげてたのに。Aさんが悪いんだからね？俺のことが特別だって言ったり、好きって言ったり、」

『それは、特別だっていうのはそういう意味じゃなくて、』

「じゃあどういう意味？」

『…その、なんていうか、』

どういう意味だなんて、光成の言っている意味の他にないはずだから答えられるわけが無いのに、というかそもそも光成が言っている意味も言葉にされてないからわかるはずがないのに、一人で勘違いしてるこのおばさんって思われてるのかなとか、頭の中で一人で論争を繰り広げている間に、気づいたら押し倒されていた自分の体。

背中にはソファ。

視界には白い天井と、光成の綺麗な顔。

じゃなくて！

この危機的状況をどう切り抜けようか考えていると、

「Aさん、百面相してるよ？」

なんて、彼が余裕そうに笑うものだから。

いつだって、彼は高校生なのに私より何枚も上手なんだ。

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