ナイモノネダリ (ページ15)

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「……光輝。」

「その女の人、だれ？」

聞きたいのはこっちなのに、こうき、と呼ばれたその子は鋭い目で私を睨んでくる。

そんな彼の目に脅えているのに気がついたのか、光成はサッと私を自分の後ろに隠してくれた。

「別に光輝には関係ない、」

「普通に関係あるから。お前あとちょっとで留年確定だぞ？親友に留年されたら困るんですけど。」

「別に、もう学校辞めるつもりだし。」

「何言ってんの、ほんとに。この女のせいなの？」

「ちがう！Aさんはそんなんじゃないから……。」

「ふーん、Aさん、ねえ。」

私のことを舐めまわすように見る彼のことを本能的に苦手だと思った。

嫌な子だな、と彼から視線を逸らそうとすると、彼は私に話しかけてきた。

「Aさん、知っててこういうことしてるなら犯罪ですよ？」

『……え？』

「ちょっと、光輝！」

「光成の年齢ちゃんと知ってますか？17歳ですよ？高校2年生です。」

頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。

2年生って、大学2年生じゃなくて高校2年生……？

私は未成年の高校生と一緒に暮らしてたってこと？

「Aさん、どっからどう見ても歳上ですよね？2人がどういう関係か知らないですけど、深く関わる前に縁を切った方があなたのためです。」

この際、歳上ですよねと煽られたことなど頭に入ってこないくらい、混乱していた。

いや、たしかに彼は1度も大学生だなんて言っていなかったし、私に年齢を伝えることもしなかった。

彼のその大人びた雰囲気に私が勝手に彼も大人なんだと勘違いして。

全部自分の責任だ。

「……どうなってももう俺は助けないからな。」

最後にそう言い捨てると、彼は元いた子たちの所に走って向かった。

残されたのは、状況が整理できなくて混乱する私と、悔しそうに唇を噛んで俯く光成。

はたから見たら異様な光景だ。

『……とりあえず、帰ろっか。』

「え？」

『一旦、頭の中整理したい。ごめん、』

「いや、たぶん謝るのは俺だよね。ごめんなんか巻き込んじゃって。」

そうやって言って、手を差し出してきた光成の手を握り返すことは出来なかった。

怒りとか悲しみとか、そういうのでは無いなにか特別な感情が渦巻く。

恋人でもないのに、裏切られたって思ってもいいものだろうか。

*