ナイモノネダリ (ページ14)

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『久しぶりに来た、こんな広いとこ。』

「そうなの？たまにはショッピングでもして息抜きしないと死んじゃうよ～」

週末、光成に連れられて来たのは電車で1時間ほどの所にある大きなショッピングモール。

あの街で一人暮らしを始めてから、あの狭い空間でしか生きていなかったから、久しぶりの都会の空気に少しだけ胸が高鳴った。

「ねえ、Aさんこれどう？」

『……それはいらなくない？』

「いるでしょ、俺もAさんとコーヒー飲みたい。」

いつも光成が起きる前に私が朝コーヒーを飲んでるのを知っているのか否か、彼は色違いの赤と青のマグカップをカゴに入れた。

『もう、私のはいいから、自分のもの買いなよ』

「……分かってるよ。」

そう言いながらも光成がカゴに入れてるのはペアセットのやつばっかりだ。

子どもみたいでかわいいな、と素直にそう思った。

「あれ？檜山じゃない？」

どこからとなく、声がして。

その苗字に聞き覚えはあったけど、休日に考える人のことではない、と頭から消しさるけれど、隣の光成がピクっと反応するから、私も気になってしまう。

『光成、どうかした？』

「…え？ああ、なんでもない。」

『大丈夫？』

「ん、」

『これ買ったら休憩しよっか。』

「うん、そうだね。」

お会計しちゃおうよ、と光成の腕を引っ張ろうとした瞬間、彼の反対側の腕が別の人に引っ張られる。

「ほら～、やっぱり檜山じゃん！」

可愛らしい女の子の声に複雑な気持ちになって、誰？と後ろを振り返ると、そこには制服を着た男女5人。

その制服、このあたりじゃ有名な進学校のだって前に上司が話してたな。息子が通ってるって自慢を散々聞かされた。

「もお～、最近学校来ないからどこで何してんのかと思ってた！今日も登校日だったのに欠席連絡もしないで、」

「……人違いじゃないですか？Aさん、行こ。」

呆気に取られている私の腕をとって、そのまま歩き出す光成に聞きたいことは沢山ある。

学校来てないって、登校日だって、あの子たち制服着てるじゃない？

……ひょっとして高校生なの？

私を引っ張ってどんどん先に進む光成に止まってって、その一言が言えなくて困っていると、

「光成、逃げても無駄だから。」

そう言って、さっきの子達の中にいた男の子が1人追いかけてきた。

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