疑似恋愛 (ページ5)

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喚かれるのがよっぽど嫌だったのか、観念したよようにオートロックを開けて、引きずり込むように部屋に俺を入れたA。

「なに？積極的じゃん。」

Aに掴まれた左手を見ながら言うと、ぱっとその手は離されて

「いい加減にして。」

とぴしゃり。

「何しに来たの。」

「ご飯食べさせろって言ったのに連絡して来ないから。」

「だからって急に来ないでよ。」

「何回もLINEしたじゃん、」

「…知らない。」

開き直ったように不機嫌な顔をしたAはよく見たら、ぶかぶかの白Tシャツにショートパンツで、思わずその白くて傷1つない生脚に息を飲んだ。

そんな俺を知ってか知らずか、そのまま背を向けて洗面所の方に向かうA。

「わたし今日用事あるから、ご飯は無理。」

「どこ行くの？」

「…どこでもいいでしょ。」

「またあのオッサンのとこ？」

核心を突くのは早すぎたかと思ったけど。

このまま追い出されたらわざわざ来た意味が無い。

「…なんのこと？」

ぱっと振り返って睨むようにしてそういう彼女に確信を持った。

ああ、あれは本当にAだったんだなって。

心のどこかで、ただの似てる人であってほしかったって思っていたんだろうな。

「こないだおじさんと腕組んで歩いてんの見かけたから。」

「見間違いじゃない？」

「俺もその方が良かったけど。Aって図星つかれた時、下唇噛むよね。自分で知ってるかわかんないけど。」

ハッとしたように目を見開いてすぐに俺から視線を逸らす彼女に思わず怒鳴りつけそうになった。

何してんだよ、自分のこと大事にしろよ、って。

でも。

彼女の大きな目に今にも溢れそうなくらい溜まった水滴を見たらそんなこと言えなくなった。

「…なんで？なんでお前が泣くんだよ。」

泣きたいのはこっちだっつーの。

好きな女が汚い金の稼ぎ方してるって知って泣かないやつがどこにいんだよ。

「っ、湧にはわかんないよ。」

ああ、わからないよ。

なんで純粋無垢だったAがこんなことになってんのか。

なんで俺に相談してくれなかったのか。

なんでそこまでして金が必要なのか。

全然わかんねえよ。

「帰って。」

「やだ。理由聞くまでは帰らない。じゃないとこのことお母さんに言うから。」

卑怯な手かもしれない。

だけど、ここまで知っても俺は、お前を助けたいよ。

たった1人の初恋の人だから。

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