疑似恋愛 (ページ36)

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Aside

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私が勝手に疑似恋愛をしていたと思っていたけれど、私がそこにちゃんと幸せを見出していたのは、そうちゃんも私に愛を与えていてくれたからなんだって気づいた。

そうちゃんが私のことが嫌いで、突き放されていたら私はこんなに充実したオタク生活を送れなかったと思う。

「疑似恋愛、か」

「うん、ほんとの恋じゃない、お互いほんとの顔は知らない。」

「Aちゃんのほんとの顔は、湧に見せてるの？」

「え？」

その言葉はストン、と私の心に降ってきた。

湧に見せている自分は確かにありのままの自分で、何も着飾っていなくて、ほんとの私だ。

「俺も知りたかったなー、Aちゃんのほんとの姿。」

そうちゃんは、握っていた手を離して、しゃがんで私と目を合わせた。

「ねえAちゃん、湧のこと好きなんでしょ？」

「…っ」

言葉にならないような声が出た。

なんで、なんで知ってるの？

「なんでって顔してる。」

そう言ってふふっと笑ったそうちゃん。

「Aちゃん、湧と再会？してから、湧の話ばっかりしてたよ？名前は言ってなかったけど、幼なじみが幼なじみが～って。」

「うそ。」

「ほんと。俺はもうその時湧と知り合ってたからきっと湧のこと言ってるんだろうな、って聞いてたけど。ずーっと湧にヤキモチ妬いてた。Aちゃんと俺の関係がアイドルとファンじゃなかったら、って。」

「そうちゃん…」

「ほんとの顔を見せられるってなかなかできなくない？俺もアイドルじゃないほんとの自分今からAちゃんにさらけ出せるか、って言われたら怖いもん。嫌われちゃうんじゃないかな、とか色々気にしてさ、」

最後の方の声は少しだけ震えてた。

怖かったのに、私にそのほんとの自分を見せようとしてくれたんだね。

だけど私が止めちゃった、アイドルのそうちゃんが好きだからって。

私も怖いんだもん、見せるだけじゃなくて見るのも怖いんだよ好きな人のほんとの顔。

「ごめんね、そうちゃん。」

「ん？」

「色々と全部ごめん、最後までライブ行かなかったこととか、今のこととか、」

「俺も。世界一のアイドルになるっていう夢一緒に叶えようって言ってくれたのに守れなくてごめん。」

「許せない、けど。来てくれてありがとう。今日までは、ギリギリアイドルでしょ？アイドルとして最後のそうたを私がみたって事だから、それは嬉しいや。」

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