疑似恋愛 (ページ32)

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「やっぱ綺麗だな～」

視界いっぱいにキラキラしているイルミネーションを見上げながら、目を輝かせるA。

もうすぐ時期も終わるからほとんどお客さんはいない。

「やっぱって、前にも来たことあんの？」

「うん、」

そう言って頷いたあと、Aは、そうちゃんとの思い出の場所なんだ、そう呟いた。

「ここのイルミネーションが始まった頃だから10月くらいだったかな？あっちの方にステージがあるんだけど、そこでイベントがあってね、」

「…うん。」

「各メンバーにつき一人、抽選で当たった人がそのメンバーと観覧車に乗れるっていう特典があって。」

「なんだそれ、やべーやつだな。」

「うん、やべーやつ。」

「お前、まさかそれ当たったの？」

「そう、そのまさか。そうちゃんのが当たって、二人で一緒に観覧車乗ったの。ほんとにドキドキして何話したかとか全然覚えてないんだけど、」

「やば」

「上から見るイルミネーションはもっと綺麗でさ、そうちゃんに来年もまたこの景色見たいからここでライブしてねって言ったの。」

「うん、」

「そしたらそうちゃん、曖昧にそうだね、って言ってから何も話さなくなっちゃって。今思えばあの頃からなんとなく私も気づいてたのかもしれないな、そう長くないこと。」

ゆっくり歩いていた足を止めて、観覧車を見上げたA。

「そうちゃん、さよなら。」

「大好きだったよ。」

「歌もダンスも上手で、足が長くて、舌っ足らずで、距離感が馬鹿で、甘えん坊で、ヤキモチ妬きで、そんなそうちゃんのことが大好きだったよ。」

観覧車に向けて、大声で叫んだ。

「ここが、私とそうちゃんの1番の思い出の場所だから、私が1番幸せな場所だったから、ここに来たかったの。」

「そうちゃんね、観覧車の1番上で、ギューって抱きしめてくれて、Aちゃんが俺の1番のファンだよって言ってくれたんだ。」

「その言葉だけで、私はそうちゃんのこと好きになってよかったなあってそう思ったの。」

「湧、連れてきてくれてありがとう。」

「ん、」

Aは全部吐き出して、すっきりした～と言いながら俺の手をまたぎゅっと握った。

「帰ろ？」

「うん、」

俺は何も言えないまま、俺の腕を引っ張って出口に向かっていくAについて行くことしかできなかった。

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