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「ねえ、湧。」
「ん？」
「今日家帰りたくない。」
俺の背中に乗ったまま、タクシーを待っている間、Aはそんなことを言う。
「具合悪いんだから帰らないと。」
「そうちゃんとの思い出、たくさんあるから。1人で家にいたらおかしくなっちゃいそう。」
「じゃあ、俺ん家来る？」
タクシーに乗って、俺の住所を伝えると無言の時間が流れる。
だけど俺の左手はしっかりAの右手に繋がってる。
タクシーに乗った瞬間にぎゅっと繋がれたから、何も言わないままずっと握ってる。
俺はここにいるよ、居なくならないよって意味を込めて。
「ねえアイス食べたい。」
「こんな寒いのに？」
「いいじゃん、好きなんだから。」
「っわかったから。コンビニ寄ろ。」
運転手さんに行き先を家から1番近いコンビニに変更してもらうよう伝えて、窓の外をじっと眺めるAを見つめてた。
「あ、雪。」
「ほんとだ。」
窓の外を眺めてたAはいち早く雪が降ってきたのに気づいて少しだけ頬を緩めていた。
「クリスマスも正月も降らなかったのにな〜」
「そうだね、私の気持ちが空にも伝わったのかな。」
冗談のつもりで言ったのだろうけど、Aの声は確かに震えている。
無理しなくていいのに。
「大丈夫、歩ける？」
「ん、手握ってくれてたら。」
タクシーを降りて、しっかりAの手を握る。
「どれにすんの？」
「いつもの、」
「高いやつね。」
「うん、」
Aの好きなハーゲンダッツの高いやつと、俺の分のをカゴに入れる。
「あ、俺ん家何もないから。必要なもの買えよ。」
「え、何がいるんだろ…」
「いやそりゃ、下着とか？」
「え！？」
びっくりするAにそりゃそうだろ、お前同じの履くの？って聞いたらそっか、そうだよねって天然の解答をした。
「クレンジングは？」
「ねえよ、そんなもん」
「湧ってほんとに女っ気ないんだね。」
「うるさいな、」
だって女の子家に入れるの初めてだもん。
A以外の女を家にあげることすらしなかった俺の一途さにそろそろ気づいてよ。
Aが日用品のコーナーを見ている間にその辺りをぷらぷらしていると目に入った四角い箱。
絆創膏の横に置いてあるやつ。
思わず手が伸びそうになって引っ込めた。
ないない、今日手出だしたら俺の今までの頑張りが全部無駄になんじゃん。
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りるた.(プロフ) - 颯太くんが結婚式きてからの怒涛のお話が涙止まりませんでした。すごく感動しました、ありがとうございます！！！ (2020年12月6日 16時) (
レス) id: 8b02ed1f3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほの | 作成日時：2020年10月2日 23時
