疑似恋愛 (ページ2)

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Aにメッセージを送ったけれど未読無視。

それは予測済みで、Aのお母さんから預かった箱を写真に撮って送信する。

"帰省した時にお母さんからこれ預かってるけど。"

そう送ると1分も経たないうちに既読が着いた。

ビンゴ。

"明日の昼間なら時間ある。"

"俺も大丈夫。どこがいい？"

"××駅"

"分かった。13時に駅でどう？"

シンプルなOKのスタンプが送られてきてメッセージは途絶える。

すげえな、これ。

箱をマジマジと見つめる。

小さな白い箱に黄緑のオシャレな字体で書かれた"シャインマスカット"の文字。

さすが母親だ、よくわかっている。

Aが返事してこなかったらこれ使ってね、と渡されたシャインマスカットの箱。2房も入っている。

Aがシャインマスカットに目がないなんてずっと一緒に育ってきた俺も知らなかった。

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次の日、シャインマスカットの入った袋をしっかりと抱えて指定された駅に向かう。

時間になっても全くAが見当たらなくて。

人通りが多いから仕方ないかもしれないけど何あったんじゃないかって不安になって、まだ時間を2分しか過ぎていないのに "どこ？" とメッセージを送ってしまった。

秒で既読になったそれに、"もう着いてる。" と返事がきて、キョロキョロと見渡してもやっぱりそれらしき人はいない。

出口間違えてんのかなーと電話を掛けようとすると、

「わく！」

と声が聞こえた。

振り返ると見たことない人…ではなくて半年前の面影はすっかりなくなったAが立っていた。

「え、誰かと思った。」

「そう？」

不思議そうに首をかしげるけど、そうだよ、誰かわかんないって。

いわゆる量産型というのか、ピンクのリボンが着いたブラウスに黒のミニスカート、頭には大ぶりのカチューシャがのっていて、髪の毛はくるくると巻かれている。

高校生の頃は部活一筋でメイクとかオシャレとかそんな物に無縁だったはずなのに、今のAの目は瞼も涙袋もキラキラ光っている。

「ありがとう持ってきてくれて。」

「ああ、これね。」

俺の頭の中はそれどころじゃないんだけど…。

Aは目的の箱を受け取ると、「じゃあ、」とすぐ帰ろうとする。

いやいや、ここまで持ってきてあげたのにそれだけ？

「ちょ、待てよ」

振り返って歩き出そうとするとAの手首を掴んだ。

その腕があまりにも細くて、白くてぎょっとした。

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