優しい世界［5］ (ページ34)

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Taiga side

翌日、仕事が空いていた午前中は、樹のとこに行って、
少し早めにタクシーで事務所に向かった。

割り当てられていた一室のドアに向かって、立ち止まっている慎太郎の姿。

様子を窺いながら、静かに近づいて行くも、
俺の存在にはなかなか気がつかない。

「慎太郎？」
声をかけるとビクッとこちらに顔を向けて、

「あーきょも。おつかれーっ」
また昨日と同じ、無理した笑顔つくって。

ドアノブを握っていた右手が微かに震えてたのも見逃さなかった。

こいつは部屋に入らなかったんじゃなくて、
入れなかったんだ、。

「おつかれ。ちょっとあっちで話さね？」
俺が来たから焦って中に入ろうとしたのを止めて、
そんな提案をした。

戸惑いながらも、着いてきてくれた。

人が居なかったラウンジで。
向かい合って椅子に座る。

「さっきまで、樹のとこ行ってた。
今日はね、熱もなくて、調子良さそうだったよ。」

「…そっか。樹、頑張ってるよね、」

「うん。
樹も頑張ってるし、俺らも、必死だよ、ね？」

ゆっくり、間を置きながら話してみる。
隠す気は無くなったのか、シュンと俯いて、
ぎゅぅ、と履いてるパンツを強く握りしめている。

弟のように可愛がっていた、
すぐに凹んで落ち込んでた小さい時の慎太郎に重なった。

「…なんか俺、よくわかんなくなってっ。
樹が、身近な人が、病気なんて、初めてで。とにかく怖くて…
けど樹本人が受け止めて頑張ってて、
俺があたふたしてる場合じゃねーじゃんって。
…樹が帰ってきた時のためにも、SixTONESとして仕事全うするのが俺の役目だって頭では分かってんのに。
体も心も着いてこなくて…ずっと偽物の自分が仕事してるみたいで、、
…仕事すんのが、…怖いって、思ったりしてっ…… あぁ～～、ごめん、もうよく分かんねぇ、」

頭を抱えて髪の毛をぐしゃぐしゃと掻きむしる慎太郎。

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