1型糖尿病 / 赤 ページ24
Juri side
「やばい腹減ったーっ」
控え室に入るなり、慎太郎のでかい声が響く。
用意してもらっていた弁当が並んでる。
たしかにさすがの俺でもお腹減ったわ。
YouTubeの撮影日。
これからきょもの舞台やら、それぞれの個人仕事が立て込んでることもあって、今日はまとめて6本撮り。
4本撮り終えて、一旦夕食休憩。
「どれがい？
生姜焼きか〜ハンバーグか〜唐揚げ」
それぞれ2個ずつ用意されていた。
なかなかジャンクなものばっかりだけど、笑
まぁ今はお腹に入ればなんでも良い、という気持ち。
じゃん勝ちから順番に選び取った。
「みんなお茶でいい？」
「うん」と言う返事を聞いて、
1人1人に緑茶のペットボトルを手渡す。
「ジェシーもお茶でい？」
「he? あぁ、うん！さんきゅ」
「ゆっくりでいーよ」
「hehe、ありがと」
ポーチから出した血糖値の測定器を片手に、
インスリンの投与値を計算するジェシー。
ズボンのウエストにつけた機械をﾋﾟｯﾋﾟｯと操作する。
そこからお腹に繋いだカニューレへとインスリンが流れ出る。
ジェスと出会った頃にはもう1型糖尿病を患っていて、
当時は今とは違って、注射でインスリンの投与をしていた。
本人の性格もあって、
隠すわけでもなく普通に注射する姿も見ていたし、
時にはしんどそうな場面だって目にしてきた。
職業柄、毎日の生活のスタイルもバラバラで、運動量も日によって大きく変わることから、血糖値の管理が通常以上に難しくて。
より細かく、インスリンの量を管理できるポンプを使うようになったのも、もうずっと昔の話。
「いただきまーすっ」
揃って6人で、テーブルを囲んでお弁当を食べた。
よっぽど腹が減っていたらしい。
秒で食べ終えた慎太郎はまだ満たされなかったようで、
「まだ時間あるよね？ちょっと俺コンビニ行ってくるわ〜。なんか居るもんある？」
と立ち上がる。
頼むものも特になく、背中を見送った。
ﾋﾟ-ﾋﾟ-ﾋﾟ-と機械音がなる。
もはや聞き慣れた警告音。
ジェシーはポンプの機械をサッと操作して音を止める。
機械に装着しているインスリン。
2.3日に一度のカニューレの交換と共に交換するもの。
インスリンの残量が少なくなると、アラートが鳴る機能が付いているんだけど、まだ交換するほどの量じゃなくても鳴ることがあって。
その音を無視するのも、俺らの中で日常になっていた。
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作者名：じんべえ
| 作成日時：2020年7月8日 18時
