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Shitaro side
「おい樹！仕事、なんだと思ってんの？」
収録を終え戻ってきた楽屋。
部屋に入った途端、堪らずイライラを樹にぶつけた。
「慎太郎、声おっきい。
けどさすがに樹、本番中寝るのはあり得ないって」
こーちの冷静な、冷酷な口調。
「…ごめん、ほんと、…ごめん」
「俺らに謝ってもしょーがないじゃん。
仕事なめてんの？寝れてねえの？」
「っ！俺だって分かんねえんだよっ！」
樹はそう叫んだと同時にへなっと床に座り込んだ。
力が抜けて、自立しないぬいぐるみのように。
__あの日、樹には苦しい思いをさせてしまったな、と今でも思い出す。
仕事に対する姿勢も心構えも、樹が怠るはずなんてなかったのに。
表面だけ見て勝手に決めつけて、責め立てて。
樹だって1人で苦しんでたのにさ。
メンバーである俺らが気づいて手を差し伸べるべきだったのに。
ナルコレプシー
後に分かった、樹が抱えていた病気。
あの時、へなっと座り込んだ樹は、
立てない、と呟いて俯いてしまった。
どうして良いか分からなくて戸惑っていたのは、
俺もこーちも、そして樹も一緒だった。
2人で抱えてソファーに座らせて、話を聞く中で、数ヶ月前から樹が1人で、自分でも予期できない突然やってくる睡魔と闘っていたことを知り、おまけに目の前で現れた脱力発作。
こーちがその場で検索をかけると、病気が原因かもしれない、ということが分かってきて。
時間を作って検査入院をして、やっと、明らかになった。
日中、突然眠気に襲われる睡眠発作と、
感情が昂ぶった時に現れる情動脱力発作。
そしてもう一つ、樹を苦しめたのが、
夜の寝付きの悪さ。
全部、おんなじ病気の症状だなんて、驚くよね。
眠気に苦しんでるのに、眠れないって悩みも付き纏うなんてさ。
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作者名：じんべえ
| 作成日時：2020年7月8日 18時
