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Juri side
しばらく駅で立ち話してしまっていたことに気付いた。
「ここからの乗り換えはややこしいから、
車で来たよ。駐車場行こう。ん、荷物もらう。」
左手に持ったボストンバッグを受け取り、俺の肘を掴ませた。
肘に触れる手の感覚も、記憶の中のもちもちの手とは違う、がっしりとしたものになっている。
思春期男子の成長は恐ろしいな、
なんてことを思いながら、駐車場へと1人の時より気持ちゆっくりめに歩いた。
マンションまでの道中、
手探りで車の窓を開け、スーッと大きく空気を吸い込む北斗。
「そんな美味いもんじゃないだろ。静岡と違って」
「んー、、緑の匂いはしないね。
車の音、いっぱいする。聞いたことないくらい」
「片側4車線、反対側もだから全部で8車線。
こんな道路、地元にはないもんな、笑」
「…すげぇ、」
北斗が東京に来るのは初めてのこと。
今彼の頭の中には、どんな風景が描かれているんだろう。
「うしっ、到着。降りていいよ」
助手席から降りて立ち尽くしている北斗の手を取る。
ロフト付き、1DKの簡単なつくりの俺の部屋。
ひと通り案内して、間取りを理解させるのにも、そう時間はかからなかった。
部屋に入ってから遮光メガネを外して顕になったその顔立ちが、我が弟ながら端正で思わず頬が緩んだ。
「洋服とか出しとくか。シワシワんなっちゃう。
カバン、開けてい？」
鞄に手をかけようとすると、
「ん、自分でやる」
と、座っていたソファーから立ち上がる北斗。
前に彷徨わせる手を取って、場所を伝えた。
自分の中でコーディネートは決まっているらしい。
手触りで見極めて、1日分ずつ上下セットにして、渡したハンガーにかけている。
北斗、お前、そんなことまで、出来るようになったんだな…
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作者名：じんべえ
| 作成日時：2020年7月8日 18時
