優しい世界［5］ (ページ17)

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全盲 / 黒ページ17

兄弟設定

青(社会人)×黒(中3)
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Juri side

＂北斗、今見送りました＂
そんな連絡をママから貰ったのが、ちょうど2時間前くらい。

北斗が乗ると聞いている新幹線がもうすぐ到着するはずだ。
ソワソワと落ち着かないままに、改札前で待ち構える。

自分の場所を見失ってどこかで彷徨ってしまっていないだろうか。
乗り継ぎは上手く行っただろうか。
予定した車両に乗れただろうか。
無事にホームに降り立つことは出来るだろうか。

頭の中を駆け巡る心配ごと___

とは裏腹に平然とした様子で、顔を出した弟。
白杖を片手に、点字ブロックに沿って改札にやってきた。

駅員さんが特急券を受け取り、通してくれたのを見届けて、俺も駆け寄る。

「北斗」と声をかけて肩にポンと手を置いた。

彼は足を止め、少し顔を上げた。
「にいちゃん？」

「うん、そう。久しぶり。よく来れたじゃん。」

さっきまで心配しまくって冷や冷やしていた人格を抑えて、兄貴の風格を出す、笑

「乗り換え、駅員さんが手伝ってくれたから」
昔と変わらない、力の抜けたふにゃっとした笑顔を見せる弟。

「ちゃんと頼めたの、偉いじゃん。
てかお前、背伸びすぎ笑
俺より高ぇよ？多分。」

北斗に会うのは、約2年半ぶり。
中学部への進学を機に、彼は盲学校の寄宿舎に入って生活を始めて。
俺は俺で、仕事の都合でなかなか実家に帰れずにいた。

北斗が家に帰るタイミングと、俺が帰省するタイミングが合わずにここまで来てしまって。

今年はお盆休みをしっかり取れたから実家に顔を出すと連絡をしたら、北斗の1人旅計画をママから提案された。

中学部へ上がると、自立に向けた訓練も随分と本格化される。寄宿舎への入舎も、そのひとつ。
ひと通りのことを、自分の力で出来る様に。

ここまでの積み重ねを試すためにも、人生経験のためにも、静岡の自宅から、俺が今住む東京まで、1人で電車と新幹線を使ってやって来ること。

中学3年の夏休み。
それが彼にとっての目標というわけ。

これから数日間、弟との2人の暮らしが始まる。

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