優しい世界［3］ (ページ40)

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過換気症候群 / 黒ページ40

リアル設定
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Shintaro side

「っ…はあっ、…はっ…んっ…」

胸元をギュッと握って苦しそうな呼吸を始めた北斗。

「ほくと～？聞こえる？
だーいじょうぶ。大丈夫。ゆっくりゆっくり。」

隣に座って背中をさする。

「…っ、はぁっ…しん、たろっ…んっ…ﾋｭｯ…」」

「そ、しんたろーだよ。北斗落ち着こう？
ゆっくり息吐くんだよ。」

大袈裟に俺が深呼吸をするのを見せれば、北斗も真似をするように俺に合わせて息を吐こうとしてくれて。

「…んっ…ふぅーっ…はぁっ、…ふぅーーっ」

「ん、上手にできてるよ。大丈夫、大丈夫。」

そうしているうちに、段々と北斗の過呼吸も落ち着いた。

「はぁ…ごめ、慎太郎。もう、平気。」

「良かった。しんどく無い？」

「ん、大丈夫。」

その言葉に、俺も周りで静かに見守っていたメンバーも安堵した。

「本番までもう少し時間あるから、ゆっくりしときな。」

頷いた北斗は座っていたソファーにそのまま身を委ねた。

極度の緊張や不安を感じる状況になると、北斗はよく過呼吸を起こしてしまう。

始まりはいつだったか。それは正直分からない。

徐々に徐々に、違和感を感じていった。

本番前に北斗が楽屋を抜けることが増えて、戻ってきた時には何処かしんどそうで。

何かあったのかと、さりげなく聞いてみても、北斗は答えてくれないし。

そんな日々が続いたある日、トイレに向かうため楽屋を出ると、すぐそこの廊下でしゃがみ込む北斗を見つけた。

「北斗！」

思わず叫んで駆け寄ると、激しい過呼吸を起こしていて、必死に必死に落ち着くように声をかけても改善することは無かった。

俺の声を聞いて楽屋から出てきた他のメンバーも必死だった。

症状はどんどんと酷くなり、倒れ込んで手が痙攣して硬直を始めたときの恐怖感は今でも忘れない。

急いで救急車を呼んでもらった。

バラエティの収録を控えていた俺らはすっぽかすわけにはいかなくて、北斗はマネージャーに任せて5人で出演した。

それでも俺は心配で仕方なくて、上手く喋れていたか、笑えていたか、よく覚えていない。

隣にいたきょもがずっと俺を気にかけて微笑んでくれていたことだけはずっと頭に残ってる。