優しい世界［3］ (ページ33)

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Taiga side

面会終了時間になって病院を出た。

今日は本当にいつもに比べるとマシなようだった。

途中でしんどくなって、リクライニングを倒して眠ってはいたけど、吐き気を催したりせずに穏やかに睡眠も取れていた。

帰りに北斗に頼まれた帽子をいくつか買った。

調べてみると割と近所に医療用の帽子を取り扱っているお店があったから。

俺には理解が難しい派手な服が好きな北斗だから、どんなものが良いのか悩んだけど、無難なものから少し派手目のものも複数買って気に入ったものを使ってもらうことにした。

洗い替えも必要だろうし、ある分にはいくつあっても良いだろう。

…

ｶﾁｬｯ

玄関のドアが開く音がした。

「おかえり母ちゃん」

「はぁ、大我。ただいま」

「お疲れ。ご飯あるよ？」

「あぁありがとね。頂こうかな」

「おっけ。温める。」

もう日付が変わる時間だった。

女でひとつ、俺らを育てるために働く母親のために、昔から家のことは俺と北斗で補っていた。

北斗が病気になってからは治療費なんかの為に、母ちゃんはこれまで以上に働くようになって、俺は家のことと北斗のことを見てやれるようにアルバイトをやめた。

金銭的にはバイトもしてた方が良いんだけど、どうしても北斗が1人きりになる時間が増えてしまうから。

母ちゃんが夜食を食べてる向かい側の椅子に腰掛けて、1日の話をする。

「北斗さ、脱毛始まったみたい、」

「…そう。…様子はどうだった？」

「うーん…平気、大丈夫ってそればっかり。
帽子買ってきてって頼まれたから買ってきた。
明日学校終わりに持ってくよ。」

「…ありがとうね。ほんとに。いくらだった？
明日は夕方病院行けると思うから」

「いいよお金は。俺から北斗にプレゼント。
母ちゃん来るって明日伝えとく。北斗喜ぶよ」

2人きりの家は妙に静かで、いつまで経っても慣れることはない。

けど、北斗は、1人きりで夜を明かしてるんだよな…

それこそ孤独でしんどいだろう…