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Taiga side
前日の火事の一件があってから、慎太郎の様子がおかしいんだ。
もう1週間ほど経ったけど、ずっと空元気というか、いつものうるさい慎太郎ではあるんだけど、長いこと一緒にいる俺らなら、違いにはなんとなく気づく。
目にはクマも出てきているし。
心配して声をかけても、その話には触れたがらずに逸らされてしまって、俺らもあえてそこには触れずにいた。
だけどさすがに心配で。
どうしたらいいのかと頭を悩ませていた。
デビュー曲を披露させてもらえる機会ができて、そのダンスリハが終わって帰る準備を始めたところだった。
皆他の個人仕事が後に控えていたみたいでマネージャーさんの車へと向かっていった。
残ったのは俺と慎太郎。
帰りは個人で、だから、慎太郎も俺と同じで電車なはず。
方向も途中まで一緒だし、こういう時は一緒に帰るのが俺らの中で自然と決まりになってたことなんだけど、、
「慎太郎？ 帰ろ？」
椅子に座って俯いて、片付けをしていない慎太郎に声をかけた。
背中を向けていたから、何をしてるかはよく分からなくて。
「…きょも、…」
少しの沈黙の後、小さな声でそれだけ呟いた。
「どうした？」
驚いて、正面に回って目が合うようにしゃがみ込むと、目をぎゅっと瞑って泣くのを我慢しているようだった。
安心して欲しくて手をそっと握った。
「…家に帰りたくないんだ…んっ、、…
おかしいんだよ、あれから。寝ようと目を瞑るとこの前の火事の様子と、ガキの頃の火事の記憶がごっちゃになって…脳裏に現れてっ…眠れなくて…怖くて怖くて…ｸﾞｽｯ…もうどうなっちゃってんだよ…」
「…話してくれてありがとう。
そういうことってさ、今まではなかったの？」
「…昔、火傷してからしばらくはそうだった…
けどそん時はまだ子供だったからさ、ママと一緒に寝てたら安心できて、思い出さなくなったんだよ…それからは全く」
「…そっか、どうしても辛かったらさ、一緒に病院行こうか。何か変わるかも。
とりあえず今日は遅いし、一緒に帰ろうぜ？泊まっていい？」
深刻にし過ぎるのもきっと慎太郎は気を遣うから、いつものトーンで返してみた。
「…ｺｸﾝｯありがときょも、」
昔っから変わらないわんこのような目で見つめて頷いてきた。
すこし笑顔も見せてくれて安心した。
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作者名：じんべえ
| 作成日時：2019年11月24日 9時
