拝啓、僕が歩んだ日々へ (ページ33)

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変化球ぷろぽーず!! ページ33

のどがとても乾いた。

ちょうど見ていた映画が終わって、エンドロールに入ったところ。
これ幸いと立ち上がってキッチンにたつ。

「お、おもしろかったね～…」

(男女のイチャイチャシーンの間ずっと目ぇつむってたな…)

『いぶかわいいよね』
「何が!!」

コップに口をつけながら思わずふふふっと笑ってしまう。
そういうとこもかわいいんだよなぁ。

水はただの水道水で、冷たくて、おいしかった

―――けれど

『おっかしーなー』

「何が?」
『のどかわいた』
「?うん、どんどん飲めば?」

２杯目。
３、４杯目。５杯目。

「ちょ、ちょっと…お腹、たぷたぷしないの?」

おかしい。

飲んでも飲んでもちっとも乾きがおさまらない、むしろ、どんどん乾く。
心なしか空腹感もしてきた。映画見る前にお腹いっぱい食べてきたのに。

「ねぇってば」

こいつと。

―――――ふと頭をよぎった

(ま、さか)

(うそ、嫌だ、嫌だよ)

(＿＿だけど確かお母さん言ってたな)

“今は大丈夫だとしても、20歳くらいが限界よ”
“きっといつか突然渇きに堪えられない日が来る”

『私、こないだ20になったばっかりだよっ…』

そんな私の気持ちとは裏腹に、体がだんだんしんどくなってくる。

いや、むしろ何かみなぎるような。
欲しい。欲しい、欲しい、

『いぶ、逃げっ、…て、』

「え?何から?どこから?ていうかさ、苦しそうだよA、大丈夫?」
『いっ…、いから、お願い!!』

ついにうずくまった私を覆うように、後ろにそっと寄り添われる。
大きくて平たい手が優しく何度も背中を上下した。

ごめん、お願い、と

祈るような申し訳ない気持ちで彼を突き飛ばす。心底びっくりした顔で
いぶは私の顔をうかがう。「ちょっと、ねぇって」

『さよなら』

「は?」

『別れる。ていうかもう２度といぶとは会わない、絶対。』

「は!?」

“周りを傷つけたくないならここに来なさい”
“母さんは待ってるから”

(えっと確か、何とかっていう島の森の中の―――…)

ふらつく体に鞭打って立ち上がる。
壁を伝って玄関へ。…あぁ、いつも我慢できなくて私からここで彼にキスしだしちゃうんだった。
ちょっと待ってって恥ずかしそうに制止するいぶは、世界で１番愛おしかったのに。

もう欲しがっちゃいけない。

だって、

「待ってよ!!
　なんで、僕何かよくないことした?嫌いになった?」

『っ違うの、私がいけないの、お願い、手離して!!!』

「死んでも嫌だッッ」

……―――ぷつり