西の有閑倶楽部

なんと再び ページ16

藤井流星





　さっき帰ってきて、男山の散歩中。

　...散歩って言うよりこれはもうほぼランニング。




流「もうええって...！」



　男山の疾走に付き合わされてついたところはまさかの...

　早希ちゃんの家の前。

　足下で男山がクーンと鳴いた。シェリー大好きやな...



流「これじゃもう完璧にストーカーやで？」

早「流星くん？」

流「はい？...はっ！あの、これはあの、こいつが...俺はもう逆に来たくなかってんけども...」




　否定しすぎて笑われてるし...

　

　しゃーない。犬のせいにしてもおかしいか。



早「シェリーは小学校の入学祝いに父が買ってくれたの。毎日一緒にご飯食べて、一緒に寝て。ケガでダンスが出来なかったときもシェリーが私の支えだった...」

流「男山は寂しがるやろうな、シェリーに会われへんくなったら。」

早「どうして？」

流「え？引っ越すんねやろ？」

早「父が事業で失敗したの。会社を建て直すとか言って、海外に行ったっきりもう半年。家も差し押さえられてて...」

流「そっか...」

早「もうダンスも出来なくなるなぁ...きっと今度の神無祭が最後。ずっと夢だったの、神無祭に出ること。」

流「そっか。」




　不意に立ち上がった彼女は、神無祭で踊るであろうダンスを踊り始めた。

　そこで踊る彼女は、夕日に照らされて思わず綺麗だと言ってしまいそうだった。

　せっかく、彼女の最後の最後に叶った夢。

　...守ってやりたい。

　そう思った。

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