第二十五話 ページ27
『皆様、ダンスの時間がやってまいりました。パートナーがいる方は、早めにお相手と一緒にいてください』
もうそんな時間か。こんなところでなにやってるんだろ、私。
立ち上がって、ドレスについた汚れを軽く叩いて落とす。元々綺麗な場所だが、だからと言って気にしないわけにはいかない。
「あら、こんなところで何をしてらっしゃるのかしら。悪巧みでもなさってるのですか？」
「……アピア様。そのような発言は、控えたほうがよろしいですよ」
ふん、と彼女はそっぽを向いた。エリザはどうしたのだろうか。一緒にいるものだと思ったのだが……。
「アレン様とエリザが、貴方を探してきてほしいって言ってましたから。あまり心配させるようなことはおやめくださるよう」
「それは、申し訳ありません」
行きましょう、とスタスタと先に歩く。 アピア様の足音は少し遅れてやってきた。静かな廊下に、二人の靴の音が木霊する。
ふと、後ろから聞こえていた音が途絶えて振り向いた。アピア様は俯いて、立ち止まっていた。
どうしたのだろう、と少し小首を傾げると、苛立ったような声が聞こえた。
「ねえ、ガルワ様。貴方はもう少し、周りからの目を気にしたほうがいいと思いますわよ」
どうやら忠告のようだ。そうだ、確かに彼女はエリザと仲がいいから、私を見れば苛立つのかもしれない。
ひょっとしたらあの手紙も……と考えたが、彼女はそこまで回りくどいことはしない。現に今、彼女は私にはっきりと忠告してくれた。
「ご忠告ありがとう。ところでアピア様はパートナーの方はどうされたんです？ きっと待っているでしょうに」
「彼には先に行けないことを伝えてありますわ。私のことを見つけたら迎えに来るようにも」
「まあ、しっかりしていていいですわね。私は、アレン様に伝えそびれてしまいました」
彼女はどこか不機嫌な様子で「そう」と返事をしたが、そのあとはまた黙ってしまった。
音楽が響いているパーティ会場につく。「ありがとう」とアピア様に告げたあと、私は会場の隅に行こうと人の間を通っていった。
すると、明らかにこちらへ近づいて来る足音が聞こえて、私は立ち止まる。
なんだろう、今日は会う人が多いと思う。
「……いた！ A！」
「アレン様？」
「どこに行ってたんだ全く……！ 婚約者に失踪されたら困るのはこっちなんだぞ」
心配、か。
「申し訳、ありません」
絞り出した声は、あまりにもいつも通りすぎた。
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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (
レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真冬 | 作成日時：2018年1月19日 23時
