第十一話 ページ13
思えば、それはあることの兆候だったのだろうか。
ランチタイムを終えて教室に戻る途中、誰かの怒鳴り声が聞こえてきた。気になってそちらに近づいていく。声が聞こえたのは中庭の方だった。
「貴方達、何を＿＿」
「ロワ様、聞けば貴方のお家は貴族なんてとても呼べないほど貧相なのですってね？」
「よく私達と並べますわ」
あまりいい噂を聞かない御令嬢と、そのきつい言葉にぎゅっとした唇を噛むエリザがいた。その姿の、なんと痛ましいこと。
ザッ、と草を踏む音で彼女たちはこちらを振り向いた。
「が、ガルワ、様……」
「ご、御機嫌よう！」
「ええ、御機嫌よう。今の発言はどういう意味かしら？」
「今の、と申しますと……？」
とぼけるつもりか。もうこちらは全て見てしまったというのに。図々しい。
釣り上がり気味の目が、更に吊り上がるのが分かる。頭がふつふつと沸騰しそうなほど、熱くなっていくのが分かる。
なぜあなたがそれを言えるのか。なぜ綺麗な彼女がそう言われなければならないのか。
私にさえ、この子には何も言えないのに。なぜそんな真似ができるのか。
「わからないようですので、あとで個別に教えます。放課後生徒会室に来ること。クラスと担任の先生のお名前は？」
震えている彼女たちが可哀相なんて思わなかったが、きっとヴィシア様は甘く厳しい処分を言ってくださるだろう。
それよりも彼女、エリザだ。さっきからずっと固まってしまっている。
「下がって結構」と先ほどの御令嬢たちに去ってもらい、エリザへ近づく。
「ロワ様」
「っ……はい、ガルワ様。先ほどはありがとうございました」
「いえ、別にお礼を言われるほどではありません。さあ、教室まで一緒に行きましょう」
私の申し出が意外だったのか、彼女は目を丸くしてこちらを見た。しかしすぐに表情は明るくなった。今まであまり話せなかったから、会話をしようと思っているのだろうか。
……それはそれで、嬉しい。
「あの、ガルワ様！」
「ええ、なんでしょう」
こんな普通の会話なんて、初めて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 20人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (
レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真冬 | 作成日時：2018年1月19日 23時
