第十六話 ページ18
生徒会室のドアをノックして、中に入る。
「御機嫌よう、ヴィシア様」とご挨拶をしても、ヴィシア様は私をちらりとも見なかった。悔しいわけではないし、だからといって満足しているわけじゃない。ただ、仕方がないという諦めに似たような何かは私の心の中にいつもいた。
寮でやってきた書類をそっと机に置き、新たに築かれ始めている書類の山をバッグに入れた。別に急いでやらなければいけないものでもないが、だからといって放っておけば後々面倒になることは分かっている。孤独な私に生きがいを与えてくれるのは仕事、労働なんて、皮肉にもほどがある。いくら仕事をして努力をしたところで、私を認めてくれる人は居ないのだ。
「失礼しました」
「……ねぇ、ガルワくん」
急に呼ばれて、生徒会室から出ようとした状態で体が止まる。ヴィシア様の方を見て、「どうしましたか」と声を出した。緊張しているのか、喉は渇いて仕方がなかった。
「ガルワくん、君は本当にそんな人だったの?」
「……」
「僕が見た限りだと、君はもうちょっと、いい子だと思ってたんだよね。違った、かな」
違う。あまりにも違いすぎる。
私は悪い子だ。決していい子などではない。いい子なら、なんで私がこんな仕打ちを受けなければならないのだろう?
だから、私はただ一言だけ、
「ヴィシア様、私は貴方が思う程できた人間ではありませんよ」
と。微笑みながら言ってみた。
なんとなく彼の表情を見たくなくて、「では」とさっさと生徒会室を出ていく。
”君はもうちょっと、いいこだと思ってたんだよね”
”違う、かな”
ああ、だめだ、だめ。ヴィシア様にまで迷惑をかけたくない。今まで散々かけてきたのに。
私が苦しめばいいのだ。私だけが。エリザもアレン様もヴィシア様も苦しまなくていいのに。
なんで、私は私なんだろう。
不意に目に入った手が汚らわしく見えて、寮に帰ってから、今までの学園生活で初めて私は吐いた。
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ふう(プロフ) - 読ませて頂きました!!もうほんと途中胸痛かったけど、最後ハピエンで良かったです!!何か、自分をみてくれないって思ってたところがえりざ?ちゃんと夢主ちゃん似てるな、って思いました!!素晴らしかったです! (2019年9月13日 17時) (レス) id: 98934c9ea5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:真冬 | 作成日時:2018年1月19日 23時