三枚舌のあの娘について (ページ3)

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はじめまして 2 ページ3

玄関のドアが開く気配がした。

「おや、来客かな」

　シリウスは、そう口にしてから、いかにもしらじらしいと羞恥がこみあげてくるのを感じた。ごまかすように足早に玄関ホールにむかうと、そこにいたのはセブルス・スネイプと異国の少女。思わずぎゅっと顔をしかめると、相手はうっすらと薄気味悪い笑みを浮かべた。

「やあ……元気そうでなにより」
「相変わらず不健康そうな面だな。用をすませてとっとと帰れ」
「言われなくとも」

　スネイプは視線で少女を示した。

「うちの寮生だ。手厚い歓迎を望む」

　――幼い顔立ちの少女だった。黒い髪、黒い瞳、すこし色の違う肌。小柄で華奢な体躯。大きいサイズのトランクがどこかアンバランスだった。
　彼女は物怖じした様子もなくシリウスをみあげると、にっこりと人好きのする笑みを浮かべた。

「ナマエ・ミョウジと申します。しばらくのあいだお世話になります。よろしくお願いしますね」
「……ああ、よろしく。それじゃ、部屋に案内しよう」
「はい」

　少女はぺこりとスネイプにお辞儀をしてから、トランクを重そうにひきずってシリウスについて歩きだした。スネイプが玄関から出たことを確認して、シリウスは口を開く。

「知ってると思うが、ここにいるのはほとんどがグリフィンドール生、もしくはその卒業生だ。いろいろ軋轢はあると思うが……」
「ご安心を。わたし、他の寮生とも仲良くなってみたかったんです。いい機会ですからね……っと、失礼――」

　階段に差しかかったところで、少女は杖を取り出し、トランクにむけた。ふうわりとトランクが浮く。驚くシリウスをちょっとみあげて、少女は照れたように笑った。

「非力なもので……恥ずかしながら、これを持って階段を登ることはできないんです」
「いや、それは仕方ないが……驚いた。無言呪文か。完璧じゃないか」
「一応、これでも主席ですから。成人もしてますからご安心を」

　なんでもないように少女はいった。