三枚舌のあの娘について (ページ2)

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はじめまして 1 ページ2

「スリザリンの奴がここにくるって？」

　素っ頓狂な声をあげたジョージに、シリウスは思わず顔をしかめた。

「ナマエ・ミョウジという女子生徒だ。ダンブルドアからの一筆に、リーマスからの評価もある。信用に足る人物だとは思うがね」
「おおっと、六学年主席様じゃあないか。そらあ信用できるね」

　今度はフレッドが大袈裟に肩をすくめてみせた。おどけた口調にはあきらかな不満がこもっている。ハリー、ロン、ジニーも同感のようで、不満のにじむ顔をしていた。そんなこどもたちをみやって、シリウスは重いため息を吐いた。

「みんなの気持ちはわかる。わかるが、ダンブルドアがこう判断したんだ。釈然としないだろうが、今はそれで納得しておいてくれ」

　幸いなことに、これ以上反論する者はいないようだった。安堵すると同時に、蛇に噛まれてさきほどまで生死の境をさまよっていた仲間がシリウスの脳裏に浮かんだ。きっとみな、彼のことで頭がいっぱいなのだろう。当然のことである。
　手元の、先日届いた、もう何度も何度も読み返した手紙に目を落とし、シリウスは軽いため息をつく。なんだってこんなときにこんな面倒な――よりにもよってスリザリンだなんて！異国のルールに則って書かれたそれはいかにも真面目で、彼女の謙虚な人柄が透けてみえるようだった。しかし、スリザリンがそれだけのはずがない。奴らは狡猾な蛇なのだ。いったいどんな牙を隠しているやらわかったものではない。
　ナマエ・ミョウジ。
　スリザリンの六年生。本来なら七年生なのだが一年次の学年末で落第、留年する。しかしそれ以降は主席をキープ。
　日本人であり、少々英語に不慣れ。
　真面目で勉強熱心、教師からの評価も高い。
　血統を重んじる名家の出であり、もちろん純血。
　人間関係はつかず離れず。特別仲のいい相手はいないが、仲の悪い相手もいない模様。
　ダンブルドアからの手紙とリーマスからきいた話からはかれる彼女の人柄は、おおよそこのくらいが限界だった。

「今日ここにくるはずだ。無理に仲良くしろとはいわない。だが、同居人としての最低限の礼儀はつくしてくれよ」

　こどもたちからは、不満げで曖昧な返事。ただひとり、ジニーは顔をしかめてこういった。

「ねえ、まさかと思うけど、わたしと同室じゃないわよね？」
「わかってる、わかってる。別室だよ」

　ぴりぴりした空気に頭が痛くなる。
　先が思いやられた。