[wrwrd]短編集 (ページ1)

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em 夢ページ1

「教授！」

そう呼んだ私に気付いた教授は読んでいた本を閉じ、こちらに歩み寄ってきた。

「Aさんでしたか。今日は何の用件で？」

陽に当たって煌めく亜麻色の髪を耳にかけながら問う彼に質問があって、と話す。

「なるほど、そうでしたか。まあ、立ち話も何ですから奥で聞きましょう」

どうぞ、と奥の机と椅子を指し示す教授。私は彼に礼を言い、その席に移動した。

座って待っているとコーヒーの香りが漂ってきた。コポコポと鳴るコーヒーメーカーの音を
聞きながらぼんやりとまわりを見る。

「お待たせしました。それで、質問とは何ですか？」

両手にカップを持った教授がこちらにやってくる。

「実は…私、動画を見ていて。『○○の主役は我々だ！』って言うんですけど…教授って
　エーミールさん、ですよね…？」

教授は一瞬怯んだような顔をした後、怪訝な表情で答えた。

「Aさん、その根拠は何ですか？」

「えっ？根拠、ですか？」

「はい。なぜ、そう思ったのかを聞きたいのです。教えて頂けますか？」

なぜ、か。と心の中で呟く。きっかけは友達からの勧めだった。絶対はまるよ！といわれて
見始め、確かに私は我々だにはまっていった。しかし、私は観ていく内に違和感を覚えた。
それがエーミールさんだった。話し方や声の抑揚の付け方。ギャグのセンスもまるで教授そのもの。
何よりも決定的だったのは、授業で話していたことと同じことがチャンネルのブロマガで
述べられていたからだ。

そのことを教授に伝えると、彼は露骨に頭を抱え一言。

「まじかぁ…ガバったなぁ…！」

そう、もうそれは教授ではなくエーミールだった。