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「……何で来たんだよ。」
『だから、電話かかってきたの。』
結局、頑なに黙っていた先輩もAに気圧され、
あっけなく俺にカツアゲしようとした事を白状し、
親に怒られながら帰っていった。
俺が殴ったのだからおあいこだと、
あの騒がしい母親は最後まで謝ることはなかった。
それでもAは満足そうに
帰ろっか、と立ち上がり
2人で職員室を出てAが乗ってきた車に向かった。
担任から保護者に連絡したとは聞かされた。
血縁上の父親と戸籍上の母親はもう何年も会ってないし、
最近は碌に寝る間もなく仕事に向かうAは絶対に来ないと思っていた。
人を喰い、弄ぶ化け物を相手にしているA。
中学生の下らない喧嘩なんか、
なんて幼稚で馬鹿らしいと思うだろうと。
「無視すりゃいいだろ。」
『相手は親来てんのに、一人じゃ心細いでしょ?』
「……別に。」
『……まあそれは置いといて、ちょっと憧れてたの。学校に呼ばれるの。』
「は?」
『私は中学の時上手く親に甘えられなかったから。迷惑かけないためにはどうすればいいかってことしか考えてなかったんだよね。』
「……。」
『恵。もう3年しかないよ、普通でいられるのは。だからちゃんと楽しんで。喧嘩も恋も好きにやればいいよ。』
まだ残っている生徒はちらほら居る。
全員がAを振り返って、目が離せず時を止める。
それを気にも留めずに黒い服と似合わない緑色のスリッパで俺の隣を歩くA。
いつもそうだ。
残り数カ月で卒業出来た高専を突然辞め、
友人も恋人も置いて
一度見かけただけの俺なんかの傍にいることを決めてしまったA。
俺の持って生まれた術式は貴重らしいが、
そんなものに興味はないと鼻で笑われたことがある。
ならば俺はAに何もあげられない。
Aは多くを俺にくれているのに、
面倒と迷惑をかけてばかりだ。
Aの幸せは、俺が貰ってばかりだ。
「……五条さんもいるし、もうAは子守りする必要ないだろ」
『……。』
「俺のことはもういい。…もう、Aは居なくていい…」
『…………、』
小さく頷いたまま、何も言わなくなったA。
しかしすぐに黒いスーツを着た女の人が待つ車に着いた。
腕時計を確認し、急かすようにドアを開けて待ち構えている。
『じゃあ、気を付けてね。』
「…。」
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sou(プロフ) - 縞さんの呪術の作品全て拝見しました!!チューベローズの作品とても好きだったのでこちらもにまにましながら読みました!完結お疲れ様です♡♡ (2022年2月16日 9時) (レス) @page27 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
もぐ - 主様の作品の大ファンです。原作に忠実な登場人物たちや丁寧で綺麗な文章が本当に大好きです。もう書くことを辞めてしまったと存じますが自己満足でコメントさせていただきました。これからもずっと大事に読ませていただきます。素敵な作品に出会わせてくれてありがとう (2022年2月3日 4時) (レス) id: 21668848fc (このIDを非表示/違反報告)
セキララ - 私も恵とパパ黒好きなんです!(強さに惹かれた。もちろん顔も)周りの子はほとんど狗巻派なので少し悲しい。やっぱり1番は五条悟ですねw (2020年12月14日 20時) (レス) id: b7451699de (このIDを非表示/違反報告)
縞(プロフ) - セキララさん» 最初に好きになったのは五条先生ですが今は夏油や伏黒パパも同じくらい好きです。 (2020年12月14日 15時) (レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
セキララ - 最近読み始めて止まらなくなり、すぐ読んでしまいました…続きを楽しみにしています!五条悟好きですか? (2020年12月14日 6時) (レス) id: b7451699de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年10月19日 3時