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「まさか本当に来ていただけるなんて。とても嬉しいです。」
「……どうも。」
京都にある庭園が立派な老舗の料亭。
周りの音も人も何も通らない個室で、
綺麗に着物で着飾った初対面の女と中身のない話をする。
退屈で、徒爾で、些末。
鈴の音のような笑い声さえどうしようもなく不快さを感じてしまう。
十代の頃から何度も見合いの相手を紹介されては、
下らないと無視してきた。
Aさんという恋人が出来たと噂伝いに知られてからは
それを認めないと言わんばかりに頻度は増えるばかり。
今回の相手も、一瞥して黙殺するつもりだった。
ただ少し、
ほんの少しでも、
彼女の気を揉ませてやろうと
悪戯心で”見合いに行く”と口走った所為。
何故か僕は貴重な休みを、Aさんじゃない女と二人きりで過ごしている。
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だって余りにもあっけらかんと、
”いってらっしゃい。”の一言で済まされてしまったのだから。
一瞬でも嫌がる素振りさえしてくれれば、
冗談だと沢山愛して、抱きしめてあげられたのに。
相変わらずあの人は、少しも僕を留め置いてくれない。
素っ気ない態度が、
僕が離れるわけがないと胡坐をかいているようで、少し腹が立った。
そしてあながち間違いではないと分かっているから、余計に悔しい。
「当家は昔から本家に贔屓して頂いてますし、相伝の術師も多く生まれています。私の兄もその一人です。きっと良いご縁になりますわ。」
「…そうかもしれないね。」
小柄で可愛らしく、傷など一つもなさそうな綺麗な手。
よく話す口も、明かるげな雰囲気も、まるで正反対。
どうして僕は、あの人じゃないと駄目になってしまったんだろう。
声や話し方、仕草、表情。
目につく全てをAさんと比べて、
こんなに情けなく憎らしい気持ちの今でさえ、どうしようもなく貴女が好きだと思い知らされる。
「そういえば、香月様というお付き合いされている女性がいると聞きましたが、彼女はあまり良いお噂を聞きませんね。」
「……。」
「お若い頃は交友関係がお盛んだったとか。あろうことか高専を中退したとか。やはり非術師出身の方に悟様のお相手は相応しいとは思えませんでしたの。今日私を呼んで下さって安心しましたわ。」
「……。」
「だって悟様は、御三家である五条の時期当主なのですから。ふふ、」
「……。」
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sou(プロフ) - 縞さんの呪術の作品全て拝見しました!!チューベローズの作品とても好きだったのでこちらもにまにましながら読みました!完結お疲れ様です♡♡ (2022年2月16日 9時) (レス) @page27 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
もぐ - 主様の作品の大ファンです。原作に忠実な登場人物たちや丁寧で綺麗な文章が本当に大好きです。もう書くことを辞めてしまったと存じますが自己満足でコメントさせていただきました。これからもずっと大事に読ませていただきます。素敵な作品に出会わせてくれてありがとう (2022年2月3日 4時) (レス) id: 21668848fc (このIDを非表示/違反報告)
セキララ - 私も恵とパパ黒好きなんです!(強さに惹かれた。もちろん顔も)周りの子はほとんど狗巻派なので少し悲しい。やっぱり1番は五条悟ですねw (2020年12月14日 20時) (レス) id: b7451699de (このIDを非表示/違反報告)
縞(プロフ) - セキララさん» 最初に好きになったのは五条先生ですが今は夏油や伏黒パパも同じくらい好きです。 (2020年12月14日 15時) (レス) id: c197e34fed (このIDを非表示/違反報告)
セキララ - 最近読み始めて止まらなくなり、すぐ読んでしまいました…続きを楽しみにしています!五条悟好きですか? (2020年12月14日 6時) (レス) id: b7451699de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年10月19日 3時