Lupinus【呪術廻戦】

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＊「チューベローズの初恋 続」最終話の続きです。









「……」





朝だ。
近くの時計を見れば、もうほとんど昼だけど。

腕の中には、
カーテンの隙間から射し込む陽に顔を隠すように身を小さくして、
まだ寝息を立てるAさんがいる。


少し赤くなった目の下の涙の痕と
嫌がるのを聞かずに幾つも落とした赤い痕。









：









：









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こうして隣で眠る彼女を、何度も夢に見た。









夢の中では僕はAさんと過ごして、
当たり前のように何度もキスして笑い合って。


でも目を覚ませば貴女はどこにも居なくて、



こんなに幸せな夢なのに
僕にとっては何より耐え難い悪夢だった。









「………起きて、Aさん。」









このまま微睡んだ時間を過ごすのも良いが、
夜になれば、また恵の所に帰ってしまう。

限られた僕だけの時間を
ベッドの上だけで終わらせてしまうのは勿体ない。









「Aさん。」


『……ん、』









「ほら。もうお昼になっちゃう。」


『………』









ゆっくりと開いた
まだ寝惚けたままの瞳と目が合う。

何も言わずに僕を見つめ、
どうしたものかと、動かないでじっとしていると
腕を伸ばして僕の髪をくしゃっと撫でる。

細い指で髪を梳いて
すこし枯れた声で おはよ、と小さく笑う。









「……。」









夢にまで見た、僕の初恋の人。








一緒に朝食を食べ、
他愛のない会話をして、
どこかAさんの好きそうな所へ出かける。






貴女としたいことは山ほどあるのに、





こうして一緒にいられるなら、

もうそれでいいと思ってしまう。









『………懐かしいね。…前もこうやって、一緒に起きてた。』


「……うん。」









『……どっか、出かける？』


「…いや、……いいよ。」









『……』


「もうすこし、このままがいい。」









『ええ……せっかく起きたのに、』









不満そうに呟いて携帯に伸ばそうとする手を掴み、
もう一度腕の中にしっかりAさんを仕舞いこむ。

しばらくすると、
大人しく収まった小さな体から
また寝息が聞こえてきた。









『……』



「……おやすみ、」









Aさんの体温と感触が伝わって
自分も眠気を誘われ瞼を閉じる。




ゆっくりと時間は流れて、
暖かくて、心地良い。








貴女を想って見たどんな夢よりも、ずっと愛おしい。

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