Lupinus【呪術廻戦】

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埼玉のAさんの家まで伊地知に車で送ってもらい、
すっかり暗くなってきた外でAさんの帰りを待つ。

鍵は貰っているから家の中で待つことも出来るが、
なんとなく外で出迎えたかった。








『……悟？』

「…おかえり。」





『どうしたの？』

「……。」






そんなに会えない時間が長かったわけではない。
それでも何故か少しだけ懐かしく、
いつもより恋しかったAさんに甘えるように
僕を見つけて小走りで駆け寄ってきた手を握り、肩に額を乗せる。








『……もしかして、怒ってる？このあいだの話。』


「…怒ってない。」







前会ったときに僕が不機嫌になったから、
連絡もなく会いに来たいつもと違う様子に戸惑っているのだろう。

そのまま僕の気が済むまで黙って動かないAさん。

顔を上げると少し不安そうな瞳と目が合い、
短くキスして荷物を貰って部屋に向かう。


硝子の言葉の真意が知りたくて会いに来たけど、
顔を見ればもう少し気が済んでいる簡単な自分に呆れてしまう。









「……A。」

『……。』






「僕が他の人と一緒になってもいいの？」

『……。』









このまま本題がどうでもよくなってしまう前に
部屋に着き、玄関の鍵を閉めるAさんに話しかける。

暫く黙ったまま、
ふり返ってこっちを向いてくれない時間がもどかしい。







『……悟が決めたなら、いいよ。それはきっと正しいことだと思うから。』




かち、と錠をかける音が聞こえ
ようやく合った瞳はまっすぐ僕を見つめている。

鍵を置いて、今度はAさんが僕の右手を握り、
そのまま凭れる様に体を預けられると
甘い匂いは濃く、絡まった指は痺れたようにくすぐったい。







『でも、もし私が誰かと結婚するなら、もうそれは悟だと思う。』

「……。」





『悟より好きになれる人はたぶん居ないから。』

「……。」








こんな返事が返ってくるとは思わなくて、
思わず口元が緩む。









『……ねえ聞いてる？すごい恥ずかしいからもう言わないよ？』

「無理。何回も言われたらこっちがもたないよ。」









そのままAさんを抱えて、
リビングに置いてあるソファに寝かせる。

本当に恥ずかしかったのか、
少し赤くなった耳に甘噛みすると
こら、と叱る声が聞こえてきた。






『ちょっ、と、…っ、まだ話の途中でしょ。』


「Aさんがあんな事言うからだよ。続きは仲直りしてからね。」

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