三【宇髄side】 ページ3
【宇髄side】
「天元さま、お気をつけて！」
いつもの笑顔で、そう俺を見送ったのが昨日の事のようだ。
鴉から、無限列車にて数名の隊員に重傷者が出たとゆう連絡が来たのは、俺が前々から頼まれていた任務の様子を確認している時だった。
その重傷者の中に、Aがいると聞いた時は派手に焦ったが、駆けつけた蝶屋敷にいた妹は無傷だった。
眠っているだけかと、安心したのも束の間…
それからこいつは一向に起きねぇ。
穏やかな寝息をたてて眠るAの姿をただ見ているのにも飽き、こいつの頬を強くつねってやる。
『変な顔…。』
普段ならば怒ってやり返そうとしてくる姿が、容易に想像できる。
『さっさと起きろ…』
そう願いつつも、俺はAの死を覚悟した。
今俺が動揺して、任務を手伝わせている嫁達を危険に晒すわけにはいかねぇ…
Aは出会った頃から、生きる事に対してどこか無頓着だった。
まるで死ぬ為に生きているかのような…
だから、まだ小せぇこいつが自分も鬼殺隊に入りたいと言った時、目標があれば少しは自分の生に執着してくれるかと、俺はそれを止めなかった。
もちろん鬼殺隊に居れば、危険も伴うことは分かっていたが…
それでも俺は、Aに生きがいを見つけて欲しかった。
Aの煉獄への気持ちに気付いてからは、それがこいつの生きがいになってくれるんじゃねぇかと思った。
そんな矢先にこれだ。
俺はどこかでAを止めるべきだったのか？
今更どうしようもない後悔が、胸に重くのしかかる。
三人の嫁達も、このまま任務を手伝わせていれば、そのうちAの後を追わせる事になるかもしれない。
俺は柱として派手に生きるより、もっと大切なものに気付き始めた…
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作者名：mina | 作成日時：2020年11月30日 9時
