風船は弾ける ページ9
○TEN
「A、ここに来ました？」
『今日まだ会ってないよ』
「本当に？」
『うん』
ドアが閉まって10秒後、ソファーの背もたれから体を離して振り返れば、小さく縮こまっていたAと目が合う。肩に触れるくらいで切り揃えられた髪を撫でるついでに、頬に触れた。
「猫じゃないですよ」
『猫でしょ、飼い主から隠れて』
「…ジェヒョニが飼い主なの？」
『じゃあ僕の猫になる？』
「…誤魔化してくれてありがとう」
そう言って立ち上がるから、手を引っ張って隣に座らせる。髪を短くしたから、横顔が前よりも見えるようになった。飛び込んできた時はびっくりしたけど、今なら素直に褒められそうだ。
『似合ってるよ』
「…本当に？」
『本当だって』
「うん、ありがとう」
『ジェヒョニも綺麗だって言うと思うけど』
大人びた顔をしてるのに、ひとりの人間の話をすると急に、子供のようになる。お互い様だけど。もどかしかったそれはAがここを去ることで決着がつきそうだったけど、お互い何も言わないまま、Aは口をきゅっと閉じてしまった。
『Aさ、本当に辞めるつもりだったの？』
「…今更？」
『違うところに行こうとはしなかったの？って話』
「行こうとしても言わないし、何も聞いてないでしょう？」
『僕はただ言ってみただけなんだけど』
瞬きを繰り返して、じとりとした目がこっちを向いた。威嚇してる猫みたい。今顎を触ったら引っ掻かれそう。やらないけど。
『…本当に辞めるつもりだったの』
「Aを欲しいところなんてたくさんあるだろうに」
『オッパはわたしと一緒で本当に嬉しい？』
「それこそ今更だけど」
憧れの先輩のようになりたかった、Aの踊る、後ろ姿を知っている。あの子は僕たちの星なんだよと言っていた、Aの知らない先生の言葉を知っている。辞めると初めてAが言った日の、ジェヒョンの顔も。
「違うところでデビューしたら、前みたいには戻れないんだよ」
『周りは敏感だからねえ』
「デビューできないよりそれが1番嫌だったって言ったら、笑われちゃうでしょ」
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奈胡（元jen）(プロフ) - 品があって優しくて儚くて…何度もいろんなメンバーとのやり取りを読み返しています これからも楽しみにしています⭐︎ (4月30日 2時) (
レス) @page32 id: 8b083b7e19 (このIDを非表示/違反報告)
yom(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» ありがとうございます🥹これからも頑張ります❕ (8月11日 21時) (レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 何ですかこの素晴らしい世界観は！！！！！主人公へ向ける感情などが伝わってきて最高です！！！続き待ってます！！！！ (8月11日 12時) (レス) @page10 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2023年6月28日 18時
