スパンコールの密度 ページ19
○TAEIL
『休憩時間は何をしていますか？』
「……何をしていたら良いんでしょうか」
珍しく1人でいたからインタビューをしてみたけど、こっちに向いた顔があまりにも強張っていたから、カメラの電源を消す。どうかスタッフさんに最初の映像が使われませんようにと願いながら、椅子を引っ張ってきて隣に座った。
『皆のところ行かないの？』
「あ、まだここに、います」
『じゃあ俺もいようかな』
「わたしのことは気にせず、インタビューしてるんですよね？」
『もうみんな撮ったから、俺も休憩』
「Aの様子を見てきて欲しい」とジェヒョンからこっそりと伝えられていたことは、まだ秘密にしておくことにする。喧嘩でもした？と冗談で聞いてみたけど、首を横に振るだけで声は返ってこない。ポケットを漁ってみたらドヨンがくれたお菓子があったから、とりあえず手に握らせた。
「なんですかこれ…キャラメル？」
『多分美味しいよ』
「多分…？」
『それを食べ切る間くらいは相談に乗れそうだから』
視界の端っこで、ジャニに抑えられているヘチャンがいる。ヌナのところ行く！と騒いでるけど、Aはそれすら聞こえていないんだろう。セロハンを開けてあげたらありがとうございますと言って、やっと口に放り込んだ。
「すごく良く寝たんです、昨日」
『…それって良いことだよね？』
「久しぶりに8時間くらい寝ましたよ」
『良かった、それで？』
「それでも、よく眠れても、」
ぎゅっと握りしめていた手が、止まらずに震えている。触れてみたらすごく冷たくて、カイロを持ってきていない自分を少しだけ後悔する。前のように伸ばされた髪が、顔を隠すように揺れている。
「今まで、1人だったからわたしだけに、そういう、言葉が向くのは別に良かったんですけど、」
『良くないよ、何を言われたの』
「それはもう大丈夫で、でも、わたし以外に、そんな言葉を聞かせたくない」
綺麗な写真と綺麗な言葉で綴られたインタビューだけじゃ、わからない感情がある。1人で向かった現場で、1人で乗る車の中で、Aが何を考えていたのかは、きっとAは教えてくれない。大丈夫だと笑う中にどれだけの感情が隠されているのか、それすらも。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 734人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奈胡（元jen）(プロフ) - 品があって優しくて儚くて…何度もいろんなメンバーとのやり取りを読み返しています これからも楽しみにしています⭐︎ (4月30日 2時) (
レス) @page32 id: 8b083b7e19 (このIDを非表示/違反報告)
yom(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» ありがとうございます🥹これからも頑張ります❕ (8月11日 21時) (レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 何ですかこの素晴らしい世界観は！！！！！主人公へ向ける感情などが伝わってきて最高です！！！続き待ってます！！！！ (8月11日 12時) (レス) @page10 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yom | 作成日時：2023年6月28日 18時
