闇に焦がれる。【ONEPIECE】 (ページ4)

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｢ユーリはワノ国の出身なの？｣

落ち着きを戻した錦えもんに尋ねればまだ鼻水の混じった声で頷いた。甲板ではクルーの賑やかな声がする。対して船尾は静かな空気が流れていた。3人を覆う日陰がより一層その空気を作り出していた。

｢ユーリは孤児だって聞いたけど。それに"ユーリ"って、ワノ国の名前じゃないでしょ。｣

｢両親はユーリが産まれて間もなくに死に申した。立派な侍と度胸ある女の娘がユーリ。母親が外国の者でござる。｣

ユーリの家系は代々将軍に仕える曇(くもう)一族。町で飢えていた所を茶屋の娘が拾ったらしい。そこからブラッド族とどうして出会ったのか疑問に思ったが、錦えもんとモモの助の沈んだ雰囲気を見てそれを口にする事はなかった。ユーリの出自を聞かされても、だからどうしたと思うのが正直な感想だ。

｢最後に会ったのは20年前。まだ10歳の娘であった。｣

｢ふーん｣と返して、今度は錦えもんがAに質問をした。錦えもんの知らないユーリの話をして聞かせてやれば、2人の頬が緩む。

Aとユーリが初めて会ったのはAが6歳、ユーリが20歳の時。依頼人から殺しの仕事を頼まれた時だった。Aの標的とユーリの標的が同じ人物だった。それが、ユーリとの出会い。

初対面から馴れ馴れしい奴だった。標的が被った奴と共闘なんて出来やしないが、ユーリはそれを提案して来た。殺し屋と呼ぶにはあまりに真っ直ぐで、荒々しさのある奴だった。

｢ユーリの最期は見たでござるか？｣

話に一段落がついた頃、モモの助の遠慮気味な声がした。それは錦えもんも気になっていたようで、ゴクリと固唾を飲んでAに視線を向けた。目元は髪の毛で覆われて見えないが、2人は隣にいる少女の黒を見た。おぞましい何かが見えた。だが、Aの声色はそれとは打って変わって通常通りであった。

｢見たよ。だって、ユーリは目の前で死んだんだもん。｣

平然とした様子で、その顔に一切の感情を出さずに淡々と答えた。

｢そ、そうか…どう、散っていった？｣

錦えもんのそれがワノ国の人間らしい。4年も前の話なのに、その光景は今でも鮮明に思い出される。ユーリの声も鉄の匂いも全て覚えてる。記憶力がポンコツなくせにこんな事ばかりは覚えている。都合の悪いものばかり忘れてはくれない。