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面倒な事になったと呟いたAにローが同調する。ロビンと連絡を取り合うルフィを横目に、悲痛な叫び声の上がる街を見下ろした。
やる事は元よりシンプルだ。ドフラミンゴを倒せば全てが終わる。だが、それは当初の計画とは大きく離れる。SMILEを失ったドフラミンゴはカイドウに消されるはずだったのだ。それを自分達がしてしまえば、カイドウの矛先はルフィ達に向く。
そんな先の話をしている余裕はルフィにはなかった。この国を見たら何をするべきなのか明確だ。ドフラミンゴを倒せるのは自分しかいない事を麦わら帽子の男は分かっている。
ローとゾロを抱えて街へと飛び降りたルフィをAは見送った。この手足が再生するまで動き回らない方が賢明だ。
｢……人違いならごめんなさい。ずっと気になっていたのだけれど、あなた…4年前に一度会わなかったかしら？｣
静かになった空間でヴィオラが徐に口を開いた。最初に会った時から気になっていた。その深淵な目に覚えがあった。だが、予想に反してAは首を傾げた。｢会ったっけ？｣と呟いては記憶を探るような顔を浮かべた。
ヴィオラの言う通り2人は一度会っている。だが、接点なんて多くない。両者視界に入れただけだ。言葉を交わしたのは今日が初めてである。そんなものの記憶をAが覚えてる訳がなかった。
次に声を発したのはリク王だった。｢私のただの興味なのだが…｣と前置きをして本題に入った。
｢ドフラミンゴの言っていた"がらんどう"とは何なのだ？｣
｢さァね。｣
自分の話なのに、偉く他人事な口振りにリク王は眉を寄せた。｢でも｣と続けたAにリク王は再び耳を傾ける。糸で覆われた空を見る目は何を映しているのか。リク王にはその目に色が無いように感じた。
｢恐らくだけど、いわゆる暴走状態なんじゃない？｣
｢暴走？｣
コロシアム前でドフラミンゴが話していたのを思い出す。｢おれはこいつの内に本物のがらんどうを見た｣と。生憎だが、Aの記憶上そんなもんになった覚えはない。そして思い当たる節があるとするなら一度だけ。4年前の、ユーリが死んだ時だった。
足元まで転がってきたモノを確認してからの記憶がまるでない。記憶力云々の話ではない。そこだけ丸っきり切り取られたように覚えていない。
これはAの完全な憶測に過ぎないが、ドフラミンゴの言う"がらんどう"とは、その時のAの状態を指しているのだろう。
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作者名：チョコレート | 作成日時：2021年12月11日 18時
