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「この程度、ユーリ一人でも良かったじゃん。」
「そげんつれんこと言わんと!」



ぷく、と頬を膨らませて刃を自分の肩に当てる。2人の足元には血濡れの人間が数名。本来繋がっているべき部分は赤黒く染め上がって離れている。嗅ぎ慣れた鉄の匂いが充満したこの辺り一体は真昼間であるのに、逢魔時の様な不気味さを持っていた。

子供のように頬を膨らませて、柔らかい表情をAに向けるユーリはこの空間には似合わないと思った。返り血と刀に目を向けなければの話だが。刀を鞘にしまい、ゆったりとした速さで歩くユーリの後をAも追った。殺した相手が誰かは知らない。元々はユーリが依頼された殺しだ。Aはただ、ユーリに頼まれて同行したに過ぎない。











某日。ユーリの口から出たそれにAとハルは驚きを隠せなかった。ハルがユーリから情報を買うのはいつもの事。依頼が入る度にハルに仕事を頼んでいる。今回もそうだった。だが、いつもと違うのはその相手だった。海賊、人攫い、悪徳業者、海軍、役人、あらゆる人間を葬ってきた。大物を相手にする事もあった。だが、今回のはあまりにも予想外だったのだ。



「ドフラミンゴを殺すってホント?」
「もち!」



怪訝そうな顔で尋ねたハルに親指を立てて答える。ドフラミンゴを殺すと一言に言っても、それは同時に彼のファミリーも相手しなければならない事を意味する。



「ドンキホーテファミリーはヴィルゴ、トレーボル、ディアマンテ、ピーカの4人の最高幹部がいて、さらにその下に幹部がいる。いくらユーリとAでも、無謀すぎじゃない?」



難しいピアノを弾くようにキーボードを打ち込んでは画面に調べあげたドンキホーテファミリーの組織図が写し出される。青い光を受けるハルの表情は苦々しいものがあった。



「ユーリ、それ誰に依頼されたの?」



しん、と静かになった空間で最初に口を開いたのはAだった。真っ黒い双眸がユーリを射抜く。この少女の前では下手な嘘は通じない。観念したようにユーリは下眉を下げて悲しげに笑った。普段あまり見ないユーリの表情に目を丸くしたのはAだけではない。重々しく開かれたユーリの口は憎しみが篭っていた。

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作者名:チョコレート | 作成日時:2021年12月11日 18時

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