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本来あるべきものがそこにない。目を覚ましたAは自分の足元を見つめて溜息をひとつ。自分の影ない事に心当たりがあるとすればモリアだ。
少女は己の力を過信するほど馬鹿ではない。モリアと自分の間に力の差がある事くらい分かっている。モリアに挑むなんて無謀なマネをする死に急ぎ野郎でもない。
だが、影がなくて困るのも自分。
仕方がないとサニー号から降りた。
･
｢うわ……｣
誰かの部屋と思しきこの場の壁一面には同じ女性の写真が飾られていた。綺麗に整えられてはいるが、生活感の感じない部屋だ。この部屋の主は不在でAは暇潰し程度にこの部屋を捜索した。
最も、影が取られておりタイムリミットは夜明け。油を売っている場合ではないのだが。
本がぎっしりと収まった本棚の間にはデスクがあり、その上には医学書などの専門分野の本が積まれていた。詳しく見てみれば縫合技術や蘇生術についてのものが多かった。ここの部屋主は誰か蘇らせたい者でもいるのだろうかと、部屋一面に飾られた女性を一瞥した。
特段少女の興味のあるものではなかった。本を戻して再びモリアの元へ向かおうと踵を返すはずだった足は止められた。他の本と別の場所に不自然に置かれた本に目がいった。
その本を手に取り中を見れば、身に覚えのある実験についての本だった。これまでの殺人兵器の人体実験について事細かに記されていた。
実験体となった人数は数千人。人身売買で手に入れた奴 隷や捕らえた海賊、そしてAの様な一般人なども実験の対象となっていた。実験の結果、人間離れした体を持つ代わりの代償や失敗した実験体の結果まで載せられていた。
自然と本を持つ手に力が入っている事に少女は気付いていない。少女の顔にはどの感情も浮かばないが、心做しか悲しく見える。少女の背負う黒がまたひとつ大きく重くなる。少女の背中には少女が背負うにはあまりにも重すぎる十字架が背負われていた。
パタン、と本を閉じた少女は静かにその部屋を出て行った。ずっと聞こえる大きな音と揺れ。外で何かあるという事は容易に察しがつく。
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チョコレート(プロフ) - きゃーぽんさん» ありがとうございます！面白いと思っていただけるよう、これからも頑張っていきます！ (2021年10月18日 1時) (
レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読みました！これかも頑張ってください！ (2021年10月18日 1時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 水無月碧音さん» ありがとうございます！！まだまだ未熟者ですが、楽しんでいただけているようで私も嬉しいです！ (2021年10月16日 4時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - とっても面白いです！繊細な文章で、読んでいてとてもワクワクします！応援してます、頑張ってください!! (2021年10月15日 21時) (レス) @page17 id: 8595db9a5d (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 星猫さん» んー、結構色んなアニメ知ってると思います！ (2021年10月14日 16時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チョコレート | 作成日時：2021年10月12日 19時
