27 ページ27
覚悟を決めて、負ける事も分かっていて、逃げ腰のウソップがその足で立って立ち向かったウソップに｢くだらない｣なんて言葉を向けた事が腹立たしかった。
その覚悟を受け取り、全身全霊で戦ったルフィに｢くだらない｣なんて言葉を向けた事が腹立たしかった。
それを分からない程Aは馬鹿じゃない。口にしなくたってゾロの言いたい事は伝わっている。
｢何も知らねェで、あいつらを侮辱すんじゃねェ！｣
｢仲間じゃないんだもん。2人の覚悟だとか知ったこっちゃない。｣
｢んだと…！？｣
外の騒がしさにクルーが出て来ては何事だという顔色を見せていた。
皆が来たことによりゾロは小さく舌を鳴らして中に入って行った。
･
ゾロはこの一件で腹を括った態度を示した。しかし、本音を言えばゾロだってメンタル的に堪えるものがあった。船長だって揺れている状況で一味を支えられる気力はなかったし、ましてや居候になんて気は回らなかった。
今まで幾度も死線を共に潜り抜けてきた仲間が抜ける事に何も感じないはずはない。苛立ちとも違う、悲しみとも違う、名の無い感情を胸にした時、上から降ったその一言に破裂した。
少女がそういう事を言う人間だという事はちゃんと分かっていた。それも少女の性格の一つだと理解していた。それでも何も知らずにこの船に居座っては勝手な物言いをするAに怒りをぶつけずにはいられなかった。
その中にはウソップとルフィの件での名の無い感情も含まれていた。Aには関係の無い感情までも少女にぶつけた。ただの八つ当たりであった。ゾロらしくもない。しかし、今は平常時とは訳が違う。
強靭なゾロであっても人なのだ。人の弱さもそれなりに持っている。
ロングリングロングランドでAの身に何かがあったのは火を見るよりも明らかだった。しかし、それを話す事はないだろう。少女が身の上話を信用もしていない相手に話すはずがないとゾロも分かっていた。
結局、あの時何があったのかは分からず仕舞いであった。ただ、あの時、Aの怒って泣いているような表情に吐き気がする程に苛まれた。初めて、少女の背に大きな黒を見た気がした。
ゾロ自身でさえ、胸の中に巣食う胸糞悪いものを理解できなかった。
少女は取りこぼされた世界の理不尽の、その一つである。その理不尽をどこにもぶつけられない怒りが湧きたつ。
儘ならない現実ばかり誰に対しても平等に分け与えられる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 378人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チョコレート(プロフ) - きゃーぽんさん» ありがとうございます！面白いと思っていただけるよう、これからも頑張っていきます！ (2021年10月18日 1時) (
レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読みました！これかも頑張ってください！ (2021年10月18日 1時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 水無月碧音さん» ありがとうございます！！まだまだ未熟者ですが、楽しんでいただけているようで私も嬉しいです！ (2021年10月16日 4時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - とっても面白いです！繊細な文章で、読んでいてとてもワクワクします！応援してます、頑張ってください!! (2021年10月15日 21時) (レス) @page17 id: 8595db9a5d (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 星猫さん» んー、結構色んなアニメ知ってると思います！ (2021年10月14日 16時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チョコレート | 作成日時：2021年10月12日 19時
