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ウソップは自分が弱くて臆病なのを知っている。危険な事があればナミとチョッパーと共に逃げ、物陰に隠れる。
同時に自分の周りには化け物みたいに強い奴がいる。常人とは呼べない奴らが同じ船に乗っている。ウソップは時折そんな彼らに劣等感のようなものを感じていた。化け物級の強さの彼らと共にこの先進んでも自分は着いていけないと薄々思っていた。
それでもウソップは強い男だと言うことを彼自身は知らない。何だかんだと言いつつも、その両足はしっかりと地面に着いているし、飛び道具の確認までする始末。彼自身は知らなくとも仲間は彼が本当は強くてやる時はやれる男だと知っている。ウソップもこんな自分に信頼を寄せてくれる仲間がいる事を知っている。臆病者の彼が今まで戦ってこれたのは仲間の存在が大きいだろう。
ウソップはチラリとAを見た。ほんの少し前に命の危機に晒されたというのに少女はそれが嘘かのように平然としている。死ぬ間際ですらも焦りの色一つ見せなかった。ルフィがいなければ少女は死んでいた事だろう。
ウソップはAがこの船で誰よりも桁外れだと思った。少女の中で蠢く得体の知れない何かが恐ろしかった。相手に不快感すらも与える様な目が、奇妙で何とも言えなかった。でも、実は少女は周りが思うよりも良い奴なのかもしれない。勘だと言われたらそうだし、確信も何もないけれど、漠然と思っていた。
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4人がメリー号を見つけ、他の面々と合流するまでの道中にあった試練にて、3人は怪我をしたのに対してAは無傷だった。試練にて少女が敵の攻撃を受けなかったからではない。そもそもその戦いに参加しなかったからである。いくらルフィらが傷付こうが知らぬふりをした。
薄情な少女である。目の前で人が傷付こうが死のうが少女には関係の無い事だった。ここで彼らが死んだところで少女には何の害もないから。
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翌日、ルフィは昨日のようにAを連れ出しはしなかった。船に残り、地上とは別の景色の空を見上げた。A同様に船に残ったナミ達は甲板に集まっているようだ。上から見下ろしては再び空を仰ぎ、少女はその目を閉じた。
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チョコレート(プロフ) - きゃーぽんさん» ありがとうございます!面白いと思っていただけるよう、これからも頑張っていきます! (2021年10月18日 1時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
きゃーぽん(プロフ) - 面白くて一気に読みました!これかも頑張ってください! (2021年10月18日 1時) (レス) id: 0aee990b2e (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 水無月碧音さん» ありがとうございます!!まだまだ未熟者ですが、楽しんでいただけているようで私も嬉しいです! (2021年10月16日 4時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
水無月碧音(プロフ) - とっても面白いです!繊細な文章で、読んでいてとてもワクワクします!応援してます、頑張ってください!! (2021年10月15日 21時) (レス) @page17 id: 8595db9a5d (このIDを非表示/違反報告)
チョコレート(プロフ) - 星猫さん» んー、結構色んなアニメ知ってると思います! (2021年10月14日 16時) (レス) id: 077184ce48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チョコレート | 作成日時:2021年10月12日 19時