▽トマトはお嫌いですか？ ページ15
.
翌日。
「あ、いらっしゃ〜い！
もしかして、いつもの？」
「はい、いつもので。
……覚えてくださってたんですね」
「そりゃぁよく来てくれてるからね。
好きな席座って待ってて〜」
営業の合間に昼食として
イノオさんのカフェへ足を運ぶ。
店に入るとイノオさんは
ヘラっと笑い出迎えてくれた。
"いつもの"で通じちゃうなんて
ちょっとした優越感。
結構嬉しく感じていて
顔が綻んでいるのを自覚しながら
いつもの席に座る。
.
バンッ、ガタンッ。
「カフェラテとAセットのサンド……っ」
「あーっ、あのクソジジイ！ ムカツク！」
……え。
イノオさんが私の元へ品物を持ってきたと同時に、
まるで彼の声をかき消すかのように
乱暴に扉が開いて。
暴言を吐きながら入ってきたのは、
……ヤマダさん。
……え、ヤマダさん？ あのヤマダさん？
物腰柔らかそうな、ヤマダさん？
ヤマダさんが暴言？ クソジジイ？ ムカツク？
目の前に現れたのは、確かにヤマダさんだけど
私が知ってるヤマダさんには到底思えなくて……。
でも。
「伊野尾ちゃん聞いてよ！
……げ、やばっ」
イノオさんを探すために
店をぐるっと見回しながら
呼びかけたヤマダさんは、
視界に私を入れた瞬間、顔を歪ませた。
やべって顔だった。
だから。
目の前のヤマダさんは
私が知ってるヤマダさんなのだと思い知る。
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作者名：めもり | 作成日時：2021年11月21日 21時
