ジュエル・ボックス -Ryosuke.Y- (ページ11)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:12,745 hit

▽ ページ11

.

「私もびっくりしました」

そう答えたものの、
あれ、何で私がカフェの常連だって
ヤマダさんが知っているのだろう……。

そんな疑問が浮かんだけど
目の前にヤマダさんがいる状況に精一杯で
深くは考えず。

まぁイノオさんと仲が良いからかなと
勝手に自分で答えを出した。

.

「……げ、手提げ渡すの忘れた！」

隣にいるヤマダさんと
何を話せばいいのか分からず、お互いに
言葉を探していると、隣から聞こえた声。

「あ……それ、今日使いますよね」

声の主はもちろんヤマダさんで
彼の手には『やまだひな』と書かれた
ワッペンが刺繍されている
ピンク色の手提げ袋が残っていた。

「やっぱり使いますよね？
　俺、ちょっと届けてきます！じゃあ！」

ヤマダさんは私に会釈をして
急いで保育園の中へと消えていった。

ふぅ。なんだか気疲れしちゃったな。
そう思う割には、ホカホカした心を抱えて。

よし、行くか。なんて自分に喝を入れ
仕事に向かうことにした。

.

「んーっ」

いつもより早めに出勤たことを
みんなに驚かれながら仕事を始める。

今日は商談が1つもないため
事務作業を進めていた。

でも何故か
ヤマダさんの顔がチラチラと浮かんでくるから
何となく集中できなくて。

コーヒー片手に、だったけれど。
もう今日は、何杯飲んだか分からない。

.