ハッピーエンドは、ジェシーくんと

君が甘えた日 ページ34

.






いつものように、仕事を終えて、自然とAの家に帰って。
もはや同棲してるくらいの勢いでAの家に上がり込んでる俺。
そういえば、当分実家帰ってないなぁ。


でも実家に帰るとマミーもダディーも結婚はどうするんだ、とか色々詮索してくるんだよね。
もちろん、何も考えてない訳じゃないけど、お互い特殊な仕事をしてる訳だし、慎重になっちゃう訳で。

もちろん事務所にはゆくゆくは、って思いは伝えてあるし、お互い仕事に目処がついたらかな、って話はしてる。




そんなことをぼんやりと考えながらキッチンでせかせかと動くAを見遣る。
結婚したらこうやって毎日姿を見れるのかな、なんて思うと思わず顔が緩んじゃう。








『昌也〜、コーヒーと紅茶、どっちが良い？』




キッチンから投げかけられたいつもとおんなじ会話。
でも、いつもと違うところがひとつ。





「コーヒーがいい！
ねぇ！そんなことより今、俺のこと昌也って言った！」



『え？本当に？』






無意識だったなぁ、なんてキッチンで笑って自分の分の紅茶のティーパックをゆらゆら揺らしてるA。
なんだろ、思わず出たのかなぁなんて、本人はあんまり気にも留めてないみたいだけど。





昔、初めて出会った頃。

少しだけ滑舌が悪くて、『ジェシー』って上手に発音できなかったA。
一生懸命言おうとするのに、いつも『ぜしー』って。
それはそれで可愛かったんだけど、本人は気に食わなかったみたいで、何回チャレンジしてもダメ。

日本名は佐藤昌也だから、昌也で良いよって言って、しばらくはずっと昌也呼びだった。



いつ頃だったんだろう、多分、付き合う少し前くらいまでだったかなぁ。
俺のことを昌也って呼ぶのはAだけだったのに、いつの間にか、ジェシー呼びに変わってて、俺の名前を昌也って呼ぶ人はいなくなってしまった。






→

君が甘えた日 2→←樹が邪魔した日 2＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す