ハッピーエンドは、ジェシーくんと

初めて泣かせた日 2 ページ29

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5月1日公演は、なんとか終えて。
関係者席にいた家族やAの顔なんて、見ることができなかった。

公演の最後、みんなに何かを言いたげにマイクを握った樹に「やめろ」って目配せをして止めた。

気持ちは痛いくらいわかるよ、だってメンバーだもん。
集まって、バラバラになりながらもまた集まって…そんな風に一緒になった俺たちだもん。
俺だって、いっぱい言いたいことはあった。
でも、何にも言わない。
いいや、何にも言うことを許されないまんま、みんながそれぞれに色んな思いを抱えてホテルに帰った。






「なぁ、俺たち、どうなんのかな。」




デビューはいつになるのかな、それとも、もしかしてデビュー取り消しとかあんのかな。

掴んでたものが滑り落ちていくのって、こんなに怖いことなんだって初めて感じて、みんなでホテルで話し合った。

これまでのこと。これからのこと。



ハタチそこそこのメンバーたちが話し合ったところで、答えなんて出るわけがなく、不安をみんなでぶち撒けて、解決策なんて見つからないまま時間だけが過ぎて、ぐちゃぐちゃの感情を抱えたまんまそれぞれが部屋に戻った。




大きなため息とともに、ベッドに沈み込む。
そういえば、Aは明日もライブ来るんだったな、って思い出す。
こんな状態の俺たちのパフォーマンス、彼女に見せていいのかなって思って「やめとく？」なんて送ろうとしたライン。

文字を打とうとすると、すぐに画面が通話の呼び出し画面になった。






「…もしもし。」



『公演、お疲れ様。ダンスも歌も、すごかったね。』





なんで発表なかったの、なんてことを聞かないのは芸能人だから、じゃなくて、きっとAがよく俺のこと、俺たちのことを解ってるから。

ステージ上での表情なんかを見て、全部を察したんだと思う。






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