ないものねだり__ 2 (ページ8)

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俺がそう答えると、ジェシーは黙ったまま、

また俺を見つめる。

何を言っているのか、理解していないのだろう。

本当は、俺自身も自分で何を言っているのか分かっていない。

きょもから貰った香水をつけて、

今まで思ってた気持ちが全て忘れられることなんて、

可能性としては低い事なのに。

きょもから貰った香水を、自分自身に身につけていたいという

俺の欲望がチラついてしまって

その欲望に、負けてしまったんだろうか。

自分の気持ちがだんだん分からなくなっていくと、

丁度太陽の光が差し込み、ジェシーの表情がはっきりと見える。

その表情はいつもの笑顔で、でもどこか、

少し儚くて、消えそうな笑顔を俺に向ける。

安心していいのか、不安になっていいのか、

自分の今の感情に、名前を付けることはできなかった。

ジ「俺はさ、正直、樹が大我から貰った香水付けてるの、多分慣れることはないと思う。樹も分かってるだろうけど、俺嫉妬深いじゃん？」

そう言いながら薄く笑うジェシー。

安心していいんだな。と、俺は少し心を落ち着かせた。

ジ「でも樹がその香水付けようと思ったのってさ、少しでも大我を忘れようとしてたって事だよね？」

真剣に俺を見つめ、でも笑顔は絶やさないジェシー。

まあ、前から忘れようとはしてたけど。

本気で忘れたいと思ってなかったんだろうな。

片想いでもいいから

きょもの隣に、相応しい人間に

なりたかった。

そう思ってた自分が懐かしく感じる。

でも今は、ジェシーの隣にいたいと、

強くそう思う。

その気持ちに否定する理由はどこにも無いわけで、

否定する気力もない。

逆に否定してしまったら、周りが見えなくなるような気がして。

俺はその気持ちに名前を付けずにいるけれど。

俺はまた、自分が臆病なのだと、改めて思い知った。