この音に乗せて (ページ11)

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｢ただいま。｣

もちろん返事なんて返ってこない。

と思っていたが、

｢お～おかえりA｣

｢え、なんでいるの｣

｢なんだよその反応！優しい優しい兄貴が家にいるんだぞ？？｣

そう、家にはお兄が帰ってきていた。

別にお兄は家にいることは珍しくない。

ただ、この時間にいるのが珍しいだけ。

｢まだ6時なんだけど。なに？サボり？会社クビになったの？｣

｢おぉい！俺はかなり優秀だからクビになんかならないね！！｣

｢どうだか？お兄のせいで会社狭いんじゃない？｣

｢俺の顔が大きいからだ！って言わせんな！｣

お兄の名前は三葉辰哉。

大手IT企業でサラリーマンを務めている。

お兄が言うには敏腕らしいけど。

｢今日は午前勤務だったんだよ。飲みに行くか誘われたんだけどせっかく早く終わったんだからAと過ごす時間にしようかなって思って帰ってきたんだよ。いつも遅くてごめんな。｣

呑気にソファーに座りながらテレビを見ている。

｢別に、｣

とは言うけど、内心はめちゃめちゃ嬉しい。

｢そういえば、母さんまた帰国伸びるらしいよ。海外アーティストからコラボのお願いが来たらしい。｣

｢どうでもいい。｣

丁度テレビから｢日本のトップシンガーNAGISAさんがリチャードさんとコラボ曲作成決定！｣とニュースが流れてきた。

お兄がへぇ。って見てる中、リモコンでテレビをぶち切ってやった。