【APH】 第一次世界大戦 〜聖夜の奇跡〜 【ヘタリア】

第29話「悲しい仕組み」 ページ29

菊はお茶を注ぐ。


久しぶりに飲んだけど、やっぱりわたしは緑茶がいい。


「どうでした？向こうの戦況は。」

「うん…アーサーのほうは優勢だったけど、敵国はひどい有様だったよ。」

「以前、手紙に書いてくださったあの方はどうなりましたか？」

「わからない。彼は敵国の人間だから…」


ルートは今頃どうしているだろう。


きっと今も苦労に苦労を重ねて、ボロボロになりながら戦っているんだろう。


「でもね、とってもいい人だった。この世界の悲しい仕組みを、だれよりもよく理解してた。」

「例えばどのようなことを言っていましたか？」

「“貧乏ほどつらく惨めなものはない”って言ってた。貧乏だからこんなことになったんだとしか言ってなかったけど、今なら彼の言わんとしていることがわかる。」


ルートは、きっと心の中ではこんなことを考えていたに違いない。


「彼はきっと、いついかなる世が来ても、分かち合う心がなければ貧困や戦争はなくならないって…そう思っていたんじゃないかな？」


だってそうだもの。


食べ物だって分け合わないからどちらか片方が豊かになって、もう片方がひもじい思いをする。


すると自然に争う方向へ向かっていく。


「そうですね。その方の考えは正しいのかもしれませんね。」

「本当にいい人だったよ。彼は。」


今となっては、もう会えるかもわからないけど…。

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