露：「行かないで」 ページ9
今年の卒業式は天気が悪かった。
雪から再び姿を現したアスファルトの上を残った氷を踏みつけながら歩き、暗く薄汚れた灰色の雲を寂しい気持ちでわたしは眺めた。
「イヴァン。卒業生を送り出すのって、やっぱり寂しいね。」
一緒に登下校をしているイヴァンはわたしの後ろを、少し距離を取りながら歩いていた。
返事もろくにない。
「４月からわたしたち受験生だよ？イヴァンは進路決めた？」
あまりにイヴァンが静か過ぎる。
「…イヴァン？」
後ろを振り返ってみれば、わたしたちの間には数メートルの距離が出来ている。今までこんなに離れたことはなかったのに。
イヴァンの姿がとても遠い。
「Aちゃんはそれを聞いてどうするの？」
「どうしたの？」
「僕は知ってるよ。Aちゃんは優秀だから、もうとっくに進路は決めてるって。遠くの学校を受験するんだってね。」
わたしはいずれ遠くへ行く。
「Aちゃんはいつだって僕の目の前を歩いてきた。僕はそれを追いかけていただけなんだ。それがどういうことか、Aちゃんにはわかる？」
白くて長いイヴァンのマフラー。それが虚しくたなびいている。
「Aちゃんは僕と友達になってくれた唯一の女の子だよ。でも一度だって僕のことを見て振り返らなかった。今みたいに冷たい春風にスカートをなびかせながら僕の目の前を去って行く…。」
イヴァンの目が。
色素の薄いバイオレットの瞳が潤んで宝石みたいに輝いている。
「今はどこにも行かないで…。」
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
