仏：「禁断の屋上で」 ページ8
遠くから自転車のライトを揺らしながら、フランシスが近づいてくるのが見えた。
時刻は午後８時を過ぎたところ。わたしは卒業した母校の校舎の前にいる。その時の制服のままで。なぜかこの時間帯からフランシスに呼び出されたのだ。
その場所がよりによってわたしたちの母校だなんて。
「こんばんは、Aちゃん。」
「急に呼び出してどうしたの？」
「ちょっとAちゃんとランデヴーしたくてね。」
フランシスは話ながら自転車に鍵をかけ、スニーカーのかかとを履き潰したのを直している。
「じゃあ、学校の中に入ろうか？」
「ちょっと待って！いま学校って言った…？」
「そうだよ。俺、自慢じゃないけど学校の合鍵持ってるんだよね。」
フランシスが持っているのはたしかに学校の合鍵で。
「でも中に黙って入ったら不法侵入になるよ。」
「バレなきゃいいんだよ。行こう。」
言われるがまま、なすがまま。
フランシスがなぜ学校の合鍵を持っていたのかはわからないが、憶測で考えればフランシスが卒業する間際に盗み出したか先生にもらったか…。
あるいは副生徒会長をやっていた経験からあちこちの教室の鍵を持っていたのかもしれない。
「Aちゃん、校舎の中は暗いから足元に気を付けて。俺から離れないでね？」
そう言ってわたしの手を引くフランシス。これじゃ離れようにも離れられないのに。
「どこへ行くの？」
「ちょっと屋上まで。」
「どうやって屋上まで行くの？」
「ドアを塞いでるものを外してまた元通りにすれば大丈夫だよ。誰にも気付かれないって！」
「ほんとかなぁ…。」
そしていよいよ屋上の入り口へたどり着いた。ドアはベニヤ板で塞がれている。
「ちょっと待っててね。」
するとベリベリと音を立て、フランシスが釘やら板やら何もかもを剥がしていく。
「Aちゃん、開いたよ。ここが屋上だ。」
本来ならばどこの学校も屋上は閉鎖されて入れないはず。その禁断の場所へ足をゆっくり踏み入れる。フランシスに手を握られたまま、薄汚れた屋上の床を歩き、空は満天の星空だった。
「綺麗……」
「ずっとAちゃんに見せてあげたかったんだ。Aちゃんは空が好きだって言ってたからさ。」
その直後、フランシスから渡されたのは一本の薔薇。
「…何これ？」
「俺はAちゃんが好きだったよ。たぶんきっと、これからもずっと好きだ。」
“俺の気持ち、受け取ってくれる…？”
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
