中：「居残りの教室」 ページ6
教室の照明が目に刺さる。
外は徐々に青く暗くなっていき、わたしは居残りの最中。それも一人ではない。耀と一緒だ。
「Aは何してるあるか？」
「数学の問題。」
「我と一緒あるな。難しくてわからんある。」
そりゃそうだ。耀は普段から授業を真面目に受けず、居眠りばかりしているのだから問題が解けないのは当たり前。
わたしの場合はきちんと授業に出ていてもわからないけれど…。
「今はどの問題やってるあるか？」
「二次方程式。(x-3)(x+1)=1とか。」
「それならたぶんx=1±√5で正解だと思うある。」
「えっ？」
間髪入れずに答えた耀。プリントはそれぞれ違うものだから問題や答えが簡単にわかるはずがない。それを耀はあっさりと答えてしまった。どうして耀が…。
「なんでわかったの？」
「なんでって…。Aが問題を言ったあるからそれに答えただけある。」
「そうじゃなくて、どうしてその答えがすぐにわかったの？耀って数学が苦手なんじゃなかったっけ…？」
耀の沈黙に教室が凍るような気がした。
しんとした教室内には何も音が聞こえない。驚き、疑問に思うわたしの気持ちと、無表情で沈黙を貫く耀の姿がそこにある。
「…本当は、数学はそれほど苦手じゃないある。」
「それならどうしていつも居残りしてるの？」
「そんなの自分で考えるよろし。」
耀は消しゴムとシャーペンをうるさく動かしながら問題を解いてゆく。
「なんで？そんなのわからないよ。勉強ができるならわざわざ居残りする必要もないし、そんなの時間の無駄でしょ？耀はどうしてそんな無意味なことするの？もしかして家に帰りたくないからとか…」
「うるさいある。Aと議論に費やすことのほうが時間の無駄あるよ。」
顔を上げて、わたしを見て。
でもその表情はどこか緊張しているような気がした。
「我はAの横顔をもっと見ていたいと思っただけある。こうして居残りして、二人きりで過ごすのも悪くないと思ったあるからな。何か不満でもあるあるか？」
今度はわたしが黙る。
「我は好きあるよ。Aのことが。少なくとも、自分の時間を差し出してもいいと思えるほどには好きある。」
これではさっきとは逆。
互いに沈黙になった居残りの教室。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
