南伊：「春の日の放課後」 ページ5
放課後の教室に春の風が吹き、遠くから海鳴りが聞こえた。
隣の席にはロヴィーノが座っていて、わたしは他愛もない話を交わしたり、お互いが好きなアーティストの音楽を携帯で流して聴かせ合ったりもする。
いつもそうしてきた。優しい夕陽の温もりがわたしたちを包み、特別な空間を演出していたものだ。
ロヴィーノの携帯から流れているのはYUIのGLORIA。わたしたちのお気に入り。
「この歌、まるで俺たちみたいだな。こんちくしょう。」
「そうだね。」
見えない将来への不安と希望を、まるで中高生の目線から歌ったような曲。
「俺、Aと進路は同じがいいぞ。ちくしょうめ。」
「どうしたの急に？」
「Aと同じ学校行って、同じ制服で美味いジェラート食いに行ったり…ずっとAといられたらって思うんだよ。コノヤロー。」
「大丈夫だよ。これから楽しいこと、いっぱい待ってるよ。」
これから新入生も入って来る。学校中が明るくなって、部活の勧誘とか、体育祭とか、試験はだるくてもそれを乗り越えれば夏休みが待っている。夏休みになったら一緒にプールへ行って遊ぶことだってできる。
「ありがとな…コノヤロー。」
ロヴィーノは寂しそうに微笑んで、スクールカバンをだらしない恰好で背負うとドアまで歩き出す。
それを追いかけようとするのだけれども、まぶしい光のせいで姿がよく見えない。
そのまま廊下へ出た瞬間、夢のような放課後はぐらついて音を立て、そうして崩れてゆく。
悲しみの波が押し寄せ、わたしはそれに飲み込まれてしまう。
大好きなロヴィーノの姿も、あの放課後を過ごした校舎はもうない…。
＊
・
＊
「…という夢を見たんだよ。」
「何それ。意味わかんない。」
放課後、今度は別の人と語り合っている。
携帯から流れる音楽はあの時と同じ曲。
春の日の放課後は、相変わらず美しい時間を作り出していた。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
