西:「残酷な優しさ」 ページ38
「A、待ってや!」
放課後の階段を降り、アントーニョがわたしの後を追いかけてくる。
「なんで…?なんでなん?なんで別れるなんて言うん?」
着崩した制服は混乱している証。涙声のアントーニョの顔を見るのがちょっぴりつらいような気もした。
「言ったでしょ。わたしたち、似た者同士なんだって。」
アントーニョとはずっと一緒にいたいと思っていた。
わたしたちは本当に上手くやっていた。好きなものも嫌いなものも全部一緒。だが、それが問題だった。
鈍感な点でも共通していたのだから。
「A、言うたやん。俺から離れたないって。」
離れたくないという気持ちは本当だ。でも、わたしもそろそろ耐えられなくなってしまったのだ。
アントーニョがわたしをほったらかしにして、子分と呼ぶ人やベルという可愛い子、それから悪友の人たちと遊んでばかりいるのがつらくて。
それなのにアントーニョはまったく自覚をしていない。
なのにまだわたしを好きなのだと言う。
「頼むわ。そないな悲しいこと言わんといて。俺、ほんまにAが好きなんや。」
気付いてくれると期待したのが間違いだった。
「俺な…Aに『離れたない』て言われた時、その言葉が『隣にいたる』て聞こえたんや。」
憔悴しきったアントーニョの姿をもう見たくないのに。
「せやのに、Aは俺の前からおらへんようになるんか?俺、もういっぺんAとやり直すチャンスも貰えへんの?」
わたしは返事もせずにそのまま歩き出す。
「…その優しさが残酷だな……。」
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時